保育士を目指す学生さんから、「保育士として知っておきたい絵本を紹介してほしい」というリクエストをいただきました。
オンライン授業が多く、少しでも自分で学びを進めておきたいという前向きな気持ちにお応えするのは、絵本専門士で、保育者養成校の講師でもある、鴫原晶子さんです。
まずは、幼児向けのおすすめ絵本から。行事や季節にこだわらない絵本を選んでくれました。
※『ぐりとぐら』『ぐるんぱのようちえん』以外を希望されていたので、その2冊以外から選んでいます。
保育者を目指す学生さんが読んでおきたい幼児向け絵本・5選!
1. 『はじめてのおつかい』
『はじめてのおつかい』(こどものとも傑作集)筒井頼子作、林明子絵、福音館書店、1977 amazon
ママから一人でおつかいに行くように頼まれた、5歳のみいちゃん。途中で、はらはらどきどきすることに出会いながら、無事に牛乳を買ってくることができました。
表紙から裏表紙までお話が広がっています。「絵を読む」ことに慣れていない大人には、ぜひ読んでほしい絵本でもあります。あちこちに面白いことが散らばっているんですよ。絵を読んで面白いこと探しもしてみてください。
なお、同じコンビによる絵本『あさえとちいうさいいもうと』『いもうとのにゅういん』『とん ことり』(以上、福音館書店)があります。「面白いこと」はこちらにも。
2. 『しょうぼうじどうしゃ じぷた』
『しょうぼうじどうしゃ じぷた』渡辺茂男作、山本忠敬絵、福音館書店、1966 amazon
町の消防署には、かっこいい消防車や救急車がいますが、ジープを改良した小さな消防車のじぷたには、なかなか出動命令がおりません。でも、ある日じぷたが大活躍する日が来ました。
保育園の3歳の子どもたちからも「じぷたってかっこいいね。」という感想が聞かれました。同じコンビによる絵本には、『とらっく とらっく とらっく』があります。
3.『くれよんのくろくん』
『くれよんのくろくん』(絵本・こどものひろば)なかやみわ作、童心社、2001 amazon
ずうっと新品のままだったクレヨンが見つけた、真っ白い画用紙。みんなで誘い合って絵を描いていきますが、くろくんにはお誘いの声がかかりませんでした。
でも、しゃーぺんのお兄さんの一声で、くろくんの出番がやってきました。とてもすてきな絵ができ上がりましたよ。
養成校の授業で「スクラッチ画」を経験するときに、導入としてこの絵本を読んでいます。実習でも役に立つと思います。「くろんくん」シリーズとして他にも出版されています。
4. 『あおくんときいろちゃん』
『あおくんときいろちゃん』(至光社国際版絵本)レオ・レオニ絵、藤田圭雄訳、至光社、1967 amazon
これはちょっと不思議な絵本です。具体的な絵ではなくて、色紙を手でちぎったものが
主人公なのです。「あおくんです」「きいろちゃんです」とそれぞれの紹介の後に、パパやママたちもちぎり紙で登場します。色と色が混ざると別な色になることを知ることができます。色と形やレイアウトで物語が楽しめる絵本なのです。
保育で色水遊びをするときなどに、読んであげるといいと思います。そして活動に入る前に、青い色水と黄色い色水を用意して、子どもたちと本当に絵本のように色が変わるか実験してみても面白いのではないでしょうか?
私は青いセロファンと黄色いセロファンでの実験をやってみました。子どもたちは真剣に見てくれて、その後、各自、色水で確かめていました。
5. 『もりのなか』
『もりのなか』(世界傑作絵本シリーズ)マリー・ホール・エッツ文・絵、まさきるりこ訳、福音館書店、1963 amazon
男の子は帽子をかぶり、ラッパを持って森へ散歩に行きました。森の中では色々な動物たち出会い、いろいろなことをして一緒に楽しく遊びます。
かくれんぼで鬼になって目隠しをしている間に、動物たちはいなくなってしまいましたが、代わりに、迎えにきたお父さんがいたのです。この親子の会話がとても深い。
子どもが体験できる「行きて帰りし物語」(※)です。大人になってもファンタジーの世界を楽しめる人でありたいもの、と心から思います。続編に『また もりへ』があります。
行って帰る、という私たちの日常生活のパターンを、絵本の中で体現することです。『どろんこハリー』『めっきらもっきらどおんどん』(いずれも福音館書店)などが知られています。『現在、子どもが求めているもの―子どもの成長と物語―』(斉藤惇夫著、キッズメイト) に詳しく書かれていますから(P.109~)、興味がある方はこちらもお読み下さい。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)