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大切にしすぎて使えないもの、ありますか?

おじさんのかさ

『おじさんのかさ』佐野洋子、講談社、1992  amazon

黒くて細くてぴかぴか光ったとても立派な傘を持っているおじさん。出かけるときは、いつも傘を持っていきます。でも、傘がぬれるのが嫌で、雨が降ってもぬれたまま歩いたり、知らない人の傘に入れてもらったり。

ある日、おじさんが公園で休んでいると、雨が降り出しました。小さな男の子が走ってきて、傘に入れてほしいと頼みますが、おじさんは聞こえなかったことにします。

すると、そこへ男の子の友達の女の子が傘をさしてやってきて、「あめが ふったら ポンポロロン あめが ふったら ピッチャンチャン」― 二人は歌いながら帰っていきました。「ほんとかなあ」と、その歌が気になったおじさんは……?

『100万回生きたねこ』『だってだってのおばあさん』などでも有名な佐野洋子さんの作品。おじさんの表情と、おじさんと共に主役の「かさ」の描かれ方にも注目です。

使ってこそ気付く、物の価値

「雨が降っても傘をささないなんて、頑固なおじさんだなぁ」というのが、私の第一印象でした。だけど思い起こせば、私にもあるある、「大事にし過ぎて、使えないもの」。お気に入りのオシャレな服は、汚れるのが嫌で一度も着ないまま季節が過ぎてしまったり、プレゼントにもらったかわいいタオルも、実はなかなか使えなかったり……。

おじさんが変わったきっかけは、子どもたちの歌でした。傘を開くと、そこには新たな楽しみが待っていました。

物は、使ってこそ価値がある。そして嬉しい発見もあったりする。傘をかたくなに使わないことを決め、男の子の声も聞こえないふりをするおじさんは、傘と一緒に心も閉じてしまっていたのかもしれません。

読み終えた後、心がほんわかあたたかくなる一冊です。

にこっとポイント

  • 大事にしすぎて使えないものを使ってみたら、一緒に心も開いて、嬉しい発見があるかもしれません。
  • 男性の声での読み聞かせも、評判がとてもよかったです。
  • 普段、絵本を読まないご年配の男性の方へプレゼントしても、喜ばれます。

(にこっと絵本 SATO)

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