朝晩ずいぶん冷え込むようになりました。
雪が舞うような寒いとき、手に取っていただきたいのがこちら。あたたかみのあるオレンジ色の表紙が印象的な、『おばあさんのすぷーん』です。
『おばあさんのすぷーん』神沢利子作、富山妙子絵、福音館書店、1969 amazon
山の中の小さな家に、おばあさんが一人で住んでいました。
おばあさんがスープを飲むスプーンは、古いものでしたが、おばあさんに大事に磨かれて、いつもピカピカ。
ところが、ある日、おばあさんが小川で洗ったスプーンを落としたすきに、カラスがつかんで逃げてしまったのです。
けれども、カラスは、スプーンを木に隠したまますっかり忘れてしまい、今度は3匹のねずみたちが、雪の上に落ちたそれを見つけます。
スプーンは無事おばあさんのもとに帰ることができるのですが、さて、どんなふうにして……?
このお話のよいところは、なんといってもあふれてくるあたたかさと幸せです。
『くまの子ウーフ』で知られる神沢利子さんのことばは、音もリズムもやさしく楽しく、読んでいると、ほこほこと心があたたまってきます。
ねずみが 3びき やってきて
なんだろ ぴかぴか ひかってる
こわかないかい
どらどらどら
また、古い絵本のためか、最近のものに比べて絵が地味だと言われてしまうこともあるのですが、やわらかな味わいがあって、見ているうちにどんどん好きになってしまうようです。
たとえば、おばあさんとねずみたちのご飯のシーンなどでは、子どもたちは絵を見ていろいろなことを教えてくれますよ。おばあさんのほっぺが赤くなったこと、ねずみたちのセーターが新しくなっていること、窓の外にびっくりした顔のカラスがいること。
登場人物の気持ちが、ストレートに伝わってくる絵です。おばあさんや動物たちの表情や、しんと冷えた雪の中、楽しそうに動くねずみたちの姿も、ぜひ、ゆっくり味わってみてください。
おばあさんのスープを一緒にごちそうになっているような気持ちになりますよ。
にこっとポイント
- あたたかく、楽しいロングセラー絵本です。4歳くらいから楽しめますが、小学校低学年の子への読み聞かせでも喜ばれます。
- ねずみたちがスプーンを見つけたところ、おばあさんの家に向かうところ、そして最後のご飯のところなど、みんなそれぞれに好きな場面があって、それを聞くのも楽しいです。
(にこっと絵本 高橋真生)