PICK UP! 赤ちゃん絵本

私はこの島を訪れるたびに、自然と呼吸が深くなるような気がします。

いつでも、好きなときに訪れることのできる、絵本『ちいさな島』。

ちいさな島

『ちいさな島』ゴールデン・マクドナルド作、レナード・ワイスガード絵、谷川俊太郎訳、1996  amazon

表紙を見ればわかるように、この島は本当に小さな島なのです。

けれどもその小さな島で、クモはそよ風に揺れながら巣をはり、花は香り、アザラシは岩に寝ころびながら赤ちゃんを育てます。

風は穏やかだったり、うなったり。

いろいろなものが、過ぎてゆき、また巡ってくる― そんな当たり前ともいえる自然の姿が、なんとも言えず心地よく感じられます。

その様子を描くのは、シンプルで豊かな文章と写実的な絵。

たとえば冬は、こんなふうです。

冬がきた。
つめたく しずかなよるの
おおきく ふかいひみつのように
やさしく ゆきがまいおりた。

四季が描かれていますし、海のイメージか、どちらかというと夏に紹介されることの多い絵本だと思いますが、私はこの一節がとても好きで、夜に雪が降るたびに口に出さずにはいられません。

片ページいっぱいに描かれた冬の情景も、絵本の中に冬が閉じ込められているかのように、リアルで、幻想的です。

つまり『ちいさな島』は自然の描写だけでも満ち足りた気持ちになる絵本、なのですが、ある訪問者によって、島での時間はより印象深いものになります。

訪問者とは、人間の家族と、ヨットに乗ってピクニックにやってきた、一匹のこねこです。

こねこは、島を「なんて ちっぽけなところだ」と言いますが、島と話し、魚を脅迫して(!)、島と世界のつながりの秘密を知るのでした。

その、子どもが新しい発見をしたときのような、それでいて哲学的とも言えるようなやりとりの軽妙さと深さに、読み手もきっと目が輝くことでしょう― こねこと同じように!

ちいさな島でいることは すばらしい。
世界につながりながら
じぶんの世界をもち
かがやくあおい海に かこまれて。

こねこが帰っていくと、再び、島に静寂が戻ります。

そして、そのちいさな島を改めて見返し、私もまた、「ちいさな島」でありたいと思うのでした。

にこっとポイント

  • 写実的で美しい絵と素直でイメージ豊かなことばに、心が穏やかになる絵本です。幼児から、大人まで幅広い年代で、それぞれの読み方を楽しめます。
  • 1947年コールデコット賞受賞作です。作者「ゴールデン・マクドナルド」はアメリカの絵本作家「マーガレット・ワイズ・ブラウン」のペンネームのひとつです。
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