『どうする どうする あなのなか』きむらゆういち文、高畠純絵、福音館書店、2008 amazon
森の中から3匹の野ねずみがとびだしてきた。その後を2匹の山猫が追いかけてくる。「まて〜」「くってやるぞ〜」!
そんな5匹が、深い深い穴に落ちました。いくらのぼろうとしても足がすべって落ちてしまいます。
ここはとりあえず力を合わせてこの穴から脱出するために、みんなで肩に乗り、順番に出ようと決めたのはとよいものの、出る順番によっては、どちらかが食べられてしまったり、逃げられてしまったり。
お互いの利害の不一致でなかなか解決策は思い浮かびません。
そのうち、大雨が降りはじめ、穴の中に水が溜まってきて……。
昨日の敵は、今日の友? 敵と張る共同戦線
このお話のポイントは、食う者・食われる者という関係性です。
自分を脅かす存在― 皆さんには思い浮かぶ人はいますか?
仕事相手、友達、はたまた家族……?
利益が相反する相手とピンチを乗り越えるしかない、そんな場面に出くわしたこの絵本の山猫や野ねずみの姿に、大人だったら現実の誰かさんの顔が浮かんでくる、なんてこともあるかもしれません。
どうしたものか、と夢中になって敵同士が喧喧囂囂(けんけんごうごう)と話し合う様には思わずクスッと笑ってしまいます。
高畠純さんの描く、思わずニヤリと笑ってしまうような、キャラクターたちの表情にも注目です。
『あらしのよるに』や『ゆらゆらばしのうえで』の作者・きむらゆういちさんお得意の、食う者と食われる者とが出会ったときに起こる化学反応を、大人も子どももぜひ味わってみてくださいね。
にこっとポイント
- 食う者と食われる者とが出会ったときに起こる化学反応を、ユーモアたっぷりに描いています。大人なら自分の経験を思い浮かべながら、子どもならプログラミングのようにその脱出方法を考えるのに夢中に― なんて、さまざまな視点で楽しむことができるはずです。
- 読み聞かせの際には、口調の違いに合わせて山猫や野ねずみの読み分けをしてみると、キャラクターが際立ってストーリーを楽しめるようになりますよ。縦開きの構図も目を引きます。
(にこっと絵本 Haru)