新しい場所に身を置くと、新しい人と出会います。
これまでにもあった人と似ているタイプの人もいれば、出会ったことがないような人の場合もあります。
「はじめまして、こんにちは」
そうして出会うことで、自分の中になかった新しい世界や物の見方、考え方が広がっていくのです。
『かえるのピータン』どいかや作、ブロンズ新社、2008 amazon
森の奥にひっそりとある、小さな丸いお池には、かえるのピータンが住んでいました。
そこに舞い降りてきたのが、渡り鳥のパーチクです。
ピータンは、久しぶりのお客様がうれしくて、おもてなしをし、パーチクはこれまで旅してきて、見てきたものをピータンに話してくれました。
それはピータンが知らないことばかり。
パーチクに「君も旅をしてみたら?」と言われますが、ピータンはこの小さな丸い池で起こる四季折々の出来事をパーチクに話します。
きみはこのおいけにいるだけで いろいろなものをみているんだね
私は、このパーチクのこのことばが好きです。
旅をしていろんなものを見る。同じところにいてその場所で起こることを見る― お互いに違いますが、それぞれの価値を見出しているから。
価値観には違いがあって、どちらかが優れているということはなく、そう「在る」ことをお互いに認め合える関係って、ステキだと思いませんか?
この物語は、長く続くかもしれない「友達」の、始まりの物語でもあるような気がします。
にこっとポイント
- 違いのある価値観、そう「在る」ことをお互いに認め合える関係のステキさに、心温まる絵本です。
- どいかやさんの作品の楽しみは、優しく温かい感じのするイラストです。色鉛筆やマーカ―で描かれていて、色が溶け合った様子に目が喜びますよ。
(にこっと絵本 森實摩利子)