「むかし むかし おおむかし、くさや 木が、まだ くちを きいていた ころの おはなしです」
読もうとすると、自然とおおらかでゆったりとした声になる不思議。『おそばのくきはなぜあかい』の冒頭の一文です。文章は、うさこちゃんやピーターラビットでおなじみ、石井桃子さん。
『おそばのくきはなぜあかい』石井桃子文、初山滋絵、岩波書店、1954 amazon
こちらは日本の昔話を3話掲載した絵本で、「おそばのくきはなぜあかい」のほかには、「おししのくびはなぜあかい」、「うみのみずはなぜからい」が収められています。
初山滋さんの絵は、一見地味なようで、とにかく美しい。みずみずしくて、かわいらしさがあるのに洗練されていて、流れるような動きがあって、ついつい見とれてしまうほどです。
具体的でわかりやすいとは言い難いのですが、子どもたちの気持ちもとらえるようで、「なんか変な絵だね」と言いながら、何度もくり返し手にとる子も少なくありません。
お正月がより楽しくなるなぜなぜ話
ところで、皆さま、この3つ昔話の「なぜ?」に答えられますか?
子どもたちは、「なぜなぜ話」が大好きです。たとえその答えが科学的なものでなくても、それはそれとして楽しみますし、この絵本には、楽しませるだけの力があると思います。
読んでみると、これまた「変なの」「うそだー」と言いながらも、うれしそうな顔を見せてくれますよ。
3話ともお正月にぴったりの内容なので、あたたかいお布団にくるまりながら、のんびり読んでみてください。「昔」からこれからへとつながっていく大きな時間の流れを、きっと、いつも以上に感じられるでしょう。
また、半世紀以上も読まれ続けているロングセラーなので、なつかしく思われる方も多いようです。帰省のおともにも、いいかもしれません。
にこっとポイント
- お正月にぴったりの日本の昔話が3話収められた絵本です。のびのびとした文章と美しい絵をたっぷり楽しんでください。
- 4歳くらいから喜んで聞きますが、長めなので、1話ずつ読んでもいいと思います。絵本のサイズが小さく、遠目では見づらい部分もあるので、大勢への読み聞かせにはおすすめしません。
(にこっと絵本 高橋真生)