サンタのイメージの原点― 世界中で愛されるクリスマスイブの夜を描く詩の絵本です。

クリスマスのまえのよる1_デュボアザン

『クリスマスのまえのよる』クレメント・C・ムーア詩、ロジャー・デュボアザン絵、こみやゆう訳、主婦の友社、2011  amazon

「The night before christmas 」― 1823年、クレメント・C・ムーアが、病気がちだった娘のためにと、こんな書き出しで詩を書きました。

この詩が、翌年、新聞にのったことにより世界中に広まり、現在のサンタクロースのイメージ― 白いおひげに、にこにことした赤ら顔、丸々と太った体で、トナカイと共にプレゼントを配りにくる― が人々の中に定着したとも言われています。

デュボアザンが絵を手がけ、小宮由さんが日本語に訳した『クリスマスのまえのよる』は、しんしんと雪が降る中のクリスマスの夜を、心躍るようなテンポの良いことばで紡いでいます。

トナカイたちに声をかけながら煙突に降り立つ場面や、サンタクロースの姿が描写される場面では、歌うように流れることばに誰もが夢中になってしまうはずです。

そして、この絵本の一番の特徴は、縦長の形。その理由は、なんとイブの夜に靴下に入るようにデザインされているから!(※)

鮮やかで暖かな絵柄がクリスマスのうきうき感を盛り上げます。

出版社の内容説明より

こんなにたくさん! 『クリスマスのまえのよる』を比べてみよう

世界中で愛されているクレメント・C・ムーアの詩。私の身近にあるものだけで、こんなにたくさんあるのです。

元が同じ詩でも、絵を描いた人や訳者、時代によって、様々な違いを楽しめます。

ターシャ=テューダーの『クリスマスのまえのばん』

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『クリスマスのまえのばん』〈改訂新版〉クレメント=クラーク=ムア詩、ターシャ=テューダー絵、中村妙子訳、偕成社、2000  amazon

こちらの絵は、その暮らしぶりにもファンの多い、『コーギビルの村のまつり』のターシャ=テューダーが描いています。

1980年の初版が白黒とカラーのページのくり返しだったのに対し、改訂新版では全ページカラーになりました。そして、絵画のように楕円の枠の中で物語が展開していきます。枠の外など、細部までクリスマスらしい装飾や演出が描かれています。

印象的なのは、室内の場面の温かみのある暖色。家の中の猫や犬、動物たちやおもちゃたちがサンタとにぎやかに触れ合う様子が描かれていて、読んでいるだけでクリスマスのうきうきした気持ちに酔ってしまいそうです。

サンタの姿は、小柄な妖精のように描写がされています。

トミー・デ・パオラの『あすはたのしいクリスマス』

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『あすはたのしいクリスマス』クレメント・ムーア文、トミー・デ・パオラ絵、金関寿夫訳、ほるぷ出版、1981 amazon

19世紀中頃のニューイングランドの町を想定し、原詩にできるだけ忠実に描いたという、トミー・デ・パオラの絵本。金関寿夫が『あすはたのしいクリスマス』と訳しています。

シンプルなモザイク細工のような見やすくかわいらしい絵柄で、各ページには、作者のコレクションである刺し子のかけ布団(※)からとった飾り枠の模様があり、それぞれに楽しめます。

赤白の服を着た、白いひげのサンタが描かれています。

※絵本後書きより

ウィリアム・W・デンスロウの『クリスマスのまえのばん』

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『クリスマスのまえのばん』クレメント・C・ムーア文、ウィリアム・W・デンスロウ絵、渡辺茂男訳、福音館書店、1996(原作は1902年アメリカで発売、その後日本版として1996年に日本で発売)  amazon

レトロな絵柄、色合いの作風が特徴です。マザーグースのイラストでも知られた描き手らしい、味のあるコミカルな絵です。

サンタは、緑と黒の服で、現在の赤い服を着たサンタのイメージとはまた違った描写がされています。

ロバート・イングペンの『聖ニコラスがやってくる!』

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『聖ニコラスがやってくる!』クレメント・C・ムーア文、ロバート・イングペン絵、柳瀬尚紀訳、西村書店、2011  amazon

何よりもまず、画面いっぱいのにこやかなサンタの顔が印象的な表紙に、引き込まれます。一目見て、子どもが「サンタだ!」と興奮するほどです。

また、この絵本の特徴は、訳。聖ニコラス(サンタ)のことを、「翁(おきな)」と語り、他にも「総(ふさ)なり」「橇(そり)」など読みがなをつけ、普段はあまり使わないことばや漢字をあえて用いた訳になっていること。

小学校高学年以上から、実際に声に出して読んでみる楽しさを味わえそうです。

ホリー・ホビーの『サンタクロースとあったよる』

クリスマスのまえのよる7_ホビー『サンタクロースとあったよる』クレメント・C・ムーア詩、ホリー・ホビー絵、二宮由紀子訳、BL出版、2014  amazon

出版年が新しいこともあり、この絵本は紹介する中でも一番現代らしいクリスマスの夜を描いているように見えます。

特筆すべきは、詩ではお父さんがサンタと出会ったと書かれているところに、小さな男の子がもう一人いるということ。

そのため、この絵本を読む子どもたちは、この絵本の登場人物たちの服装や家の中の様子に親しみを感じ、サンタの目撃者の少年に自然と感情移入しながらこの絵本の世界に入り込めそうです。

にこっとポイント

  • 世界中で愛されているクレメント・C・ムーアのクリスマスを叙情的に描いた詩を味わって見てください。きっとクリスマスへの期待感を高め、暖かな気持ちでクリスマスの日を迎えられるはずです。
  • 同じ詩でも、訳し方や、その解釈による絵の描き方(サンタの様子や、サンタの目撃者の存在)によって、様々な特徴の絵本が多くあります。ぜひ読み比べてみて、お気に入りの一冊をぜひ見つけてみてください。
  • お子さんの年齢や、絵本のサンタの描かれ方に合わせて、読む絵本をチョイスしてみるとよいかもしれません。

 

(にこっと絵本 Haru)

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