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やまのこどもたち

『やまのこどもたち』石井桃子文、深沢紅子絵、岩波書店、1956 amazon

春は梅の花でおままごと。夏にはみんなで梨の木にのぼり、秋は家族総出でにぎやかな運動会。冬は、雪に囲まれた寒さの中の年越し。

『やまのこどもたち』は、東北地方の農村を舞台に、自然の中で生き生きと暮らす子どもたちの目線から描かれています。初版は1956年、古き良き日本の原風景を堪能することができる絵本です。

昔も今も、心踊る年越し― 子どもたちの姿から

作者の石井桃子さんは、戦後に宮城県で開墾生活を送ったといいます。

自然の中で土地を拓き、生活をしていくことは、きっと厳しい暮らしであったとも思います。でも、老人も子どもたちも、村中が生活を密にし、共に過ごしていて、愛のある絆があったことが、この絵本から伝わってきます。

四季折々の自然の中で、子どもたちが泣いたり笑ったり、生き生きと過ごす様子は、なんとも情緒にあふれ、鮮やかな情景に映ります。

なかでも「ふゆがきた」では、雪の積もる厳しい寒さの中での年越し準備が描かれていますが、この師走の様子がまた当時ならではの賑やかさと期待感に溢れています。

年越しのお魚を買って、炉端で切り身を焼く。お膳にささやかな御馳走を並べて、家族で年越しを迎える― なんて温かで素朴な幸せでいっぱいなんだろう、と胸があたたかくなるのです。

なかでも、たけちゃんが、犬や猫と、「かれこ(かれい)やいて、ぼくにも ください。おともします」「おまえと おれと どこへいく?」「らいねんへ」と、桃太郎のように戯れる場面が、わたしのお気に入りです。「また いっしょに あそびましょう」と共に新年を迎える喜びと遊び心にあふれています。

実際に経験はしたことがなくても、なんとも懐かしく純粋な幸せにあふれた子どもたちの姿を、じっくりとじっくりと味わいたくなる魅力がある絵本です。

にこっとポイント

  • 初版は1956年という、まさに昭和初期の農村の四季を描いた絵本です。自然の中で生き生きと暮らす子どもたちの姿に、心が温かくなるはずです。
  • 四季折々の農村の情景を、子どもたちの目線を通して味わうことができます。

(にこっと絵本 Haru)

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