原始時代の大家族。「さああさ」です。そこここで火山が「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」
でも、「ちち」は目を細めて「けさのさけ」。えー、朝からお酒なの?
「はは」はまなじり釣りあげて「いかたべたかい⁈」
そして、「さいていさ」「だんながなんだ」と「るすをする」のでした。
そう、『サカサかぞくのだんながなんだ』は、全文が、上から読んでも下から読んでも……の、回文の絵本なのです。
『サカサかぞくのだんながなんだ』宮西達也、ほるぷ出版、2009 amazon
でも、サカサことばを集めた「回文集」ではなく、あくまでも物語。「ふうふ」げんかが描かれます。
表情豊かな絵はユーモアたっぷり。ストーリーに直接関係のないものにも「いろくろい」「タイガーがいた」なんて回文がつけられているのですが、それまでもおかしいのがすごい!
「回文だけで物語の絵本ができるなんて」という感激と、夫婦や家族のあたたかさに、なんともうれしくなる絵本です。
子どもに読んであげるともちろん大喜びなのですが、子どもが自分で読みたがったら(ひらがなが読めない子でも言いたくなる!)、ぜひまかせてみてください。全力で気持ちをこめてくれるので、さらに盛り上がります。
(つまり、きれいな星空が印象的な表紙ですが、夜眠る直前に読むのは全くおすすめできません。ご注意ください)
日常に「たいふうごうごうふいた」「スタミナみたす」なんてポンポン飛び出してくるのも、また楽しいですよ。
さらに、家族をまきこんだ壮大な夫婦のげんかの物語としては、大人の方にもぜひ読んで、ニヤニヤしていただきたい絵本です。
さて、サカサかぞくの世界は、月が出てもう「よるよ」。「ガガガガガガガガガガガガガ……」と「とおいおと」が響きます。
みんなで「ハハ」を探しに出かけると― なんと「たいてきがきていた」!
サカサかぞくは、どうピンチを乗り切るのか!? ぜひ、絵本をご覧ください。
にこっとポイント
- 全文回文の絵本ですが、勢いのある物語が楽しく、最後まで一気に読んでしまいます。
- 小さなお子さんの場合は、「さかさことば」がわかるようになってからの方がおもしろいでしょう。小学生にも人気です。
- 笑えるだけでなく、夫婦のやりとりに心がほかほかしてきます。子どもだけでなく、大人の方にもおすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)