PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本

お住まいの地域には「どんどやき」がありますか?

都心では禁止されてしまった地区が多いようですが、ごうごう燃える火やおいしいお餅など、思い出に残る年中行事ですよね。

こちら、『ふうことどんどやき』は、初めてどんどやきに参加する女の子、ふうこが主人公です。

ふうことどんどやき

『ふうことどんどやき』いぬいとみこ作、あかばすえきち絵、偕成社、1973 amazon

もうじきお正月、というころ。町の保育園がお休みになったふうこの遊び相手は、きたかぜこぞうのさぶろうです。

ある日、ふうことさぶろうは、雪の上にうさぎの足跡を見つけました。

こうさぎたちは、寒くて寒くて、かあさんうさぎに手袋や靴下を頼むのですが、かあさんは「ぴょん ぴょん はねたら あったかくなるの」と、子どもたちをかけっこに誘うばかり。

そして、お正月。ふうこは、新しい手袋、大きな画用紙にクレヨンももらいました。そこで、山で見たこうさぎの絵をかきます。あたたかそうな、フードと手袋もかいてあげました。

ふうこが、さぶろうに、絵をうさぎたちに届けてほしいと頼むと、さぶろうは、どんどやきのときに持っておいでと言います。

さあ、どんどやきです。雪がしんしんと降る中、どんどやきはお宮で行われます。

ほっほう、もえろ どんどやき。
ふうこの ねがい かなえておくれ。

生きもののように燃え上がる赤い火と、飛び散る火の粉、降り続ける雪が、見開きページを縦に使って力強く描かれています。

人びとの願いをのせて、真っ暗な天に昇っていく、煙。どんどやきの根元のおきの上で焼く、風邪をひかなくなるという、熱い豆餅。

自然に近い土地で暮らす人々の祈りと楽しさが、キラキラ輝くようです。

この絵本は、子どもたちが、自分から手に取ることは少ないのですが、読んであげるととても喜ばれます。

空想と現実の入り混じった不思議な世界の、寒さ、火の熱さと迫力、ふうことさぶろうのやりとりの楽しさなどコントラストの効いた美しさに引き込まれてしまいますよ。

かわいらしくて、美しくて、力強い― 1973年に出版されたロングセラーですが、これからも、読み継いでいきたい絵本です。

にこっとポイント

  • 幻想的で、楽しく、美しいどんど焼きの絵本。どんど焼きを楽しみにしている子はもちろんですが、憧れを募らせたり、なつかしがったり、子どもから大人・高齢者まで、幅広い年代に読んでほしいと思います。
  • いぬいとみこさんのあとがきによると、ふうこの家は、長野県の黒姫高原にあるそうです。インターネットで検索してみると、今も行われている付近のどんど焼きの様子を見ることができます。


(にこっと絵本 高橋真生)

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