PICK UP! ハロウィンに読みたい絵本

日本語かと思いきや、なんだか意味が通じない言葉。英語でもない。

この絵本を開いて、戸惑う人もいるかもしれません。実は、この絵本は、草野心平という詩人が<蛙(かえる)語>で綴った詩なのです。

ごびらっふの独白
『ごびらっふの独白』草野心平詩、いちかわなつこ絵、斎藤孝編、ほるぷ出版、2007 amazon

巻末には日本語訳もあり、ある1匹の蛙「ごびらっふ」の崇高なる独白を、音や絵など、さまざまな角度から味わうことができます。

まずは音を楽しんで、そして蛙になりきってみて

るてえる びる もれとりり がいく
(幸福といふものはたわいなくっていいものだ)

「ゲロゲロ」「ゲコゲコ」普段、私たちが考える蛙の鳴き声からはかけ離れた、蛙語の言葉です。

体の奥底に響くような不思議な音。音読すると、自然と、ゆったりと落ち着いた声が出てきます。のんびりと自然の中で生きる蛙自身になってしまったかのような、満たされた気持ちになってくるのです。

音だけでも、蛙になりきって楽しめるこの絵本。しかし日本語訳に触れてその意味を深く知ると、一見、意味をなさないような言葉も、「るてえる」が「幸福」、「ぼろびいろ」が「夢」というように、単語として意味を持つ言葉、しかも生きる喜びと幸福に満ちた言葉だったことがわかります。

ごびらっふの言葉には、蛙として生きる喜びが満ちています。恐竜の時代の先祖から受け継がれてきた、何をするわけでもない日々を過ごす幸せを噛み締めているのです。

何と比べるわけでもなく、今、ここに在ることを幸せに思う

そんな、ごびらっふの言葉に、きっと私たちにとっての「るてえる」や「ぼろびいろ」に思いを馳せたくなるはずです。

「夢を別の言葉で表すとするとなんて言うと思う?」と親子で話してみるのもいいですね。編者の斎藤孝さんも、子どもが今、「幸福」と言う言葉をどのような音として捉えているのかを親子の会話の中で知ることができますよ、とあとがきですすめています。

この絵本を読めば、憂鬱な雨も、予期しないアクシデントも、愛せるようになるかもしれません。

にこっとポイント

  • 蛙の詩を多く残し、蛙を愛した詩人・草野心平さんだからこそ書けたこの詩を、みずみずしい絵とともにぜひ親子で味わってみてください。
  • 音だけでも楽しめ、その意味を知るとさらに深く楽しめる絵本です。
  • 昆虫語のみで描かれている『なずずこのっぺ』と合わせて、生き物たちになりきって読むことができます。

 

(にこっと絵本 Haru)

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