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眠れない夜、女の子がふと窓の外を見たら……「あれ?」ゴーグルをかけた子どもが空中で背泳ぎをしているではありませんか。

まよなかのせおよぎ

『まよなかのせおよぎ』近藤未奈作、講談社、2019  amazon

「ねぇ まって」と家の外に出て追いかけていくと、背泳ぎをしている子どもに導かれ、いつのまにか空中で一緒に背泳ぎをしています。よその家の壁を蹴りながら、大きな看板の文字の間をくぐり抜けながら、泳いでいるのです。

私は子どもの頃、空中を平泳ぎしている夢を見たことがあります。決してスムーズな平泳ぎではなく、ちょっとそこのお友達の家まで行くのにとても時間がかかりました。何十年も前のことですが、どういう訳か、これはしっかり覚えています。

この子たちの背泳ぎも、競泳のような速さではなく、ゆっくり。絵から、その動きが感じられます。

町の上空を背泳ぎしているうちに眠くなった女の子は、その子どもにちゃんと自分のベッドまで送ってもらいました。

眠れないのは、暑さのせいだと思われます。なぜなら、女の子が着ているパジャマは半袖、犬を散歩させている男の人のTシャツも半袖、何よりもゴーグルをかけて背泳ぎをしている子どもは海水浴の格好ですから。

眠れない夜は無理して寝ようとしないで、空中を背泳ぎしてみる!といった楽しいことを考えてもいいかもしれませんね。

にこっとポイント

  • 色鉛筆で丁寧に彩色された絵が、暑さを感じさせずに、今まで経験したことがない感覚を味合わせてくれます。訪れたことがない街の夜の風景もすてきです。
  • ゴーグルをかけて泳いでいる人を、私は「子ども」としましたが、違う捉え方もあると思います。
  • 第40回講談社絵本新人賞受賞作です。

 

(寄稿:絵本専門士<東京都> 鴫原晶子)

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