今年の夏は、行動制限のない夏休みでした。
行きたいところに出かけ、会いたい人に会う― 数年前では当たり前だったことが、「特別」なことになってしまいました。
家族で旅行したり、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんと楽しいひとときを過ごしたり。
今年の夏休みは、久しぶりに「あたりまえだったこと」を味わえた方が多いのではないでしょうか。
さて、この物語は、町に住む家族が山にある祖父母の家に出かけるお話です。
『しずかな夏休み』キム・ジヒョン作、光村教育図書、2022 amazon
ある夏のこと。お父さんとお母さん、そして男の子と犬の3人と1匹は、車に乗って出かけます。
祖父母の家は山あいにあります。
男の子は、森に出かけたり、湖に「バシャン」と飛び込んでたくさんの魚を見つけたりと、冒険を楽しむのでした。
夜は、みんなで夕食をとり、語らいます。
外に出て空を見上げれば満天の星。
こうして一日が過ぎていきました。
さて、この作品には文字がありません。
作者のキム・ジヒョンさんは韓国とイギリスでデザインを勉強したイラストレーター。
ある夏に感動した、湖畔の村での大自然の営みを分かち合いたくて、この作品を描いたそうです。
モノクロームの濃淡で描かれた大自然のイラストは、自分が過去に体験した五感の記憶を呼び起こされます。
温度や匂い、触覚などもリアルに感じられました。
文章がないことで、より心にせまってくる感動がある作品です。
にこっとポイント
- 大自然の夏休みを描いた、文字のない絵本です。頭で考えず、心を動かす体験を、ぜひ味わってほしいです。
- ちょっとお疲れの大人の方にもおすすめしたい作品です。大人は体験したことが多いので、情景がより深く味わえるのではないでしょうか。
(にこっと絵本 森實摩利子)