アイウエ王とカキクケ公

『アイウエ王とカキクケ公』武井武雄原案、三芳悌吉文と絵、童心社、1982  amazon

昔、アイウエ王国という国がありました。心優しいアイウエ王のもと、豊かに栄える国でした。しかし、隣のカキクケ公国の欲深いカキクケ公の企みにより、アイウエ王は捕虜になってしまうのでした。

さらに、サシスセ僧という重要人物が現れたり、タチツテ塔に王様が閉じ込められたり……と、もうわかりますね。

五十音の名をキーワードに進んでいく大活劇に、言葉遊びを楽しみながらも、外国の壮大な映画を見ているような気分になれます。

劇場で観劇をするように― クラシカルな舞台設定を味わって

この絵本は、作者の三芳悌吉さんが子ども時代に目にした観劇をもとにして作られたそう。日本語の上手なイタリア人の老人が朗々と語ったお話が、大人になっても強く心に残っていたのだとか。

大正時代から昭和時代にかけての活動写真館(映画館)は、お抱えの室内楽団があり、スクリーンの前のボックスの中で、弁士の朗読に合わせて音楽を演奏していたそうです。(作者あとがきより)

絵本の中でも、舞台の上でスポットライトを浴びた老人が大きな身振りで語る様子からお話が始まります。

この絵本の二重構造の舞台設定を感じながら読み進めると、アイウエ王が囚われてしまう場面では、悲しげな音楽が、カキクケ公を打ち破る場面にはジャジャーン!とシンバルの音が……なんていうように聞こえてきそうですよね。

読み聞かせてあげる場合には、劇場の弁士になったつもりで、思いっきり演じながら読んでみるのも楽しいですね。着物姿で拍手を送る観客たちの、パチパチという音まで聞こえてくるかもしれませんよ。

にこっとポイント

  • あいうえおが分かるようになったお子さんたちにおすすめです。展開もわかりやすく、ドキドキわくわくしながら読めます。
  • クラシカルでモダンな絵が今も人気の高い、原案の武井武雄さんは、子ども向けの絵を「童画」と呼び、それを重視した活動をされた人です。
    九月姫とウグイス
    武井さんの原画等を納めたイルフ童画館という美術館が長野県岡谷市にあります。お出かけのついでに寄ってみるのもおすすめです。

 

(にこっと絵本 Haru)

おすすめの記事