『アンドルーのひみつきち』ドリス・バーン文・絵、千葉茂樹訳、岩波書店、2015 amazon
モノ作りに夢中のアンドルー。自分が乗れるほど大きなヘリコプターに、ミシンでまわすメリーゴーラウンド、滑車を利用した自動ドアにロープウェイ― どれも、そののびのびとした発想とクオリティーの高さにびっくり!
でも、家族はみんなうんざり顔。「もとにもどして。いますぐに」。
そこで、アンドルーは自分だけの秘密基地を作るため、家を出ることに決めました。
みんなの夢と憧れ! 自分にぴったりの秘密基地
自分の「好き」を家族から守るため、同じように決断した友だちがやってくると、アンドルーは、それぞれにぴったりの秘密基地を作ります。
ボートや釣りが好きな男の子には、船着き場のある橋の上の基地。ねずみやモグラと暮らしたい男の子には、地面の下の基地(迷路のような抜け穴つき!)。ドレスをたっぷり抱えてきた女の子には、はね橋のあるお城のような基地。
どの秘密基地も工夫が凝らされていて、何でできているのか、どんな構造なのかと、隅々までじっくり見てしまいます。ペンで描かれた絵は、緻密な線と余白が美しく、見飽きることがありません。
大人も刺激する、子どもたちの「好き」のエネルギー
当然のことながら、子どもたちがいなくなった村は大混乱。ようやく見つかったときには、みんな、秘密基地にいた子どもたちさえも喜びの声をあげます。秘密基地でとことん「好き」を追求しているのに、家に帰りたくなっていた子どもたちの、愛おしさと言ったら……!
Photo by Annie Spratt on Unsplash
とはいえ、大人としては、子どもたちの望みを全て受け入れるのは難しいのです。だって、育てているトウモロコシを鳥に食べられたり、お風呂を占領されたり、泥のクッキーをオーブンに入れられたりしていたら、生活が回っていきませんから。
でも、たくさんの秘密基地に、自分の憧れや夢を刺激されるのは、子どもだけではないのかもしれません。
大人が忘れがちな、心の中の「好き」がほわっと光って、子どもの「好き」も自分の「好き」も、一緒に楽しめたらいいなあと、素直に思わせてくれます。
夢のような時間と、ほっとするエンディングに、じんわりとあたたかくなる1冊です。
にこっとポイント
- 誰もが憧れる秘密基地に、子どもも大人も夢中になります。
- 時に大人を困らせる子どもの「好き」も、大事にしたくなる絵本です。
(にこっと絵本 高橋真生)