木の上のおうちへのあこがれが、ますます募ります。
『きのうえのおうちへようこそ!』ドロシア・ウォーレン・フォックス作、おびかゆうこ訳、2017 amazon
表紙を開くと扉には、緑の葉をたっぷりと茂らせた、大きなシダレヤナギの木の上のおうち。広い空には凧が舞い、地面にはおうちに上がるためのはしごがスッとのびています。
そんな胸を高鳴らせるおうちで暮らしているのは、ツイグリーさんというおばあさんと、ニャンコという名前の犬(!)。
ニャンコはとても賢い犬で、「かわりもの」で好きなことしかしない、ちょっとだけ人に会うのが苦手なツイグリーさんに代わって、お買いものもしてくれます。
そんな暮らしをよく思わない人もいますが、ツイグリーさんとニャンコは、それはそれは幸せに暮らしていました。
ところが、ある日大きな嵐がやってきて、町は一面海のようになってしまいます。その大海原の真ん中に堂々とそびえたっていたのは、ツイグリーさんの木の上のおうち。ツイグリーさんとニャンコや、友だちのくまさんたちの大活躍は、町の人たち、そしてツイグリーさん自身の気持ちも変えていきます。
ドラマティックな展開に、素直なハッピーエンド。個性を受け止めつつ、助け合うことの大切さを、真っ直ぐに伝えてくれます。『きのうえのおうちへようこそ!』には、絵本の楽しさがしっかりつまっています。
細かく描き込まれた、臨場感とユーモアたっぷりの絵
心地の良い光と風を通す窓に、大きなソファー、おいしいシチューを煮込むことができるストーブ。何もかもきちんと手入れをされているけれど、室内はほどよく散らかっていて、なんとも居心地がよさそうです。
それから、ことばでは表現されていない、ニャンコやくまさんたち、町の人たちの動きや表情。小さな子どもたちは、目隠しをして遊んでくれるくまさんや、ほんのり焦げめのついた焼マシュマロを決して見逃しません。絵を見ることで、物語が2倍にも3倍にも膨らみます。
「きのうえの おうちに たどりつけば、もう あんしん。こわいものなど なにもない」
まさにその通り!
まるでツイグリーさんにお茶を淹れてもらったみたいに、心がぽかぽかに温まる、幸せな1冊です。
にこっとポイント
- 絵もストーリーも、子どもから大人まで素直に楽しめます。
- 秘密基地やインテリア、動物好きな方へのプレゼントに、ぜひ!
(にこっと絵本 高橋真生)