トンちゃんはネコです。シマシマで、たくさん食べる(それゆえ大きなウンチの出る)、元気なネコ。
『トンちゃんってそういうネコ』MAYA MAXX、角川書店、1999 amazon
※2022年に汐文社より復刊されました。 amazon
そんなトンちゃんには、普通のネコと、ちょっと違うところがあります。
それは、足がひとつないこと。
だから、困ったことも悲しいことも、あります。
でも、トンちゃんは、3本の足でゆっくり歩いたり、光る水を見たりすることが大好きで、「まんぞく、まんぞく」しているんです。
「トンちゃんって、そういうネコ」、なんですね。
トンちゃんは、本当にかわいいネコです。笑ったり、怒ったり、しょんぼりしたり、表情だけでなく、しぐさも全部いきいきしています。
大きなサイズにモノクロの絵の絵本なのですが、そこからトンちゃんのエネルギーがあふれてくるよう。
この絵本を読んだ人の中には、「トンちゃん、かわいいな」と思う人もいれば、「まんぞくできないよ」とどこかすねた気持ちになる人もいれば、「トンちゃんみたいになりたいな」と元気になる人もいました。
障がいを持つ人が「その通り!」という感想を聞かせてくれたこともあります。
「私、かわいそうって思われるけど、結構自分に満足してるんだよね。困ることは多いし、そういうときは助けてもらいたいけど、それとこれとは別なんだ」と。
そして私には、時にしょんぼりしつつも、満ちたりているトンちゃんが、とても美しいもののように見えます。
できないことを考えて、落ち込んだり不安になったり、周りに申し訳ない気持ちになったりするときに、ふと思い出すと、そんな自分の好きなことやできることを見つけさせてくれる…… そういうネコでもあるんです。
これからトンちゃんと出会うあなたは、どう感じるのでしょうか?
絵本の最後の方に、作者であるMAYA MAXXさんのことばが載せられています。
なるべく沢山の人がその人の“トンちゃん” を好きになってくれたらいいなと思います。
1999年に角川書店から出版され、長らく品切れになっていたこちらの絵本ですが、汐文社から、表紙も新たに復刊されました(2022年8月)。
絵本を開いて、ぜひ、トンちゃんに会ってみてください。どういう形であっても、きっと心が動かされると思います。
にこっとポイント
- 足が3本しかないトンちゃんの、自分に「まんぞく」する姿に、心が動かされる絵本です。
- 日本語のほかに、英語表記があります。
- 幼児から大人まで、幅広い世代の方におすすめです。絵本から離れてしまった小・中・高校生も、トンちゃんから離さず、しっかりと聞いてくれますよ。
(にこっと絵本 高橋真生)