『カッパーノ』森くま堂文、いわさきさとこ絵、BL出版、2022 amazon
伊達男・カッパーノ(もちろんカッパ)は、みんなの人気者。
整った顔だちも、長い前髪も、首に巻かれたスカーフ(キュウリ柄)も、赤いブーツも、他のカッパとは一味違っています。そして、魅力をさらに際立たせているのは、頭の上でピカピカ光る、お皿でした。
でも、ある日、そのお皿がカラスに奪われてしまいます。
みんなの憧れだったカッパーノは、「あたまの うえに なんにも ないなんて」「もはや カッパじゃないね」なんて噂されるようになってしまいました。
さらがない あたまに かぜは つめたい。
カッパーノは、お皿を探しに、遠く遠く旅立ちます。
さて、カッパーノは、その頭にお皿を取り戻すことができるのでしょうか。カッパーノの冒険からの帰還、驚き且つうれしいラストをどうぞお楽しみに。
笑える! でも、応援したくなる主人公の成長もうれしい
ユーモラスで笑える絵本であることは間違いないのですが、この絵本の魅力は、決してそれだけではありません。
文章のリズムがいい。登場人物の表情が魅力的。絵は遊び心たっぷりで、細かい部分を見たり、カラスの隠したお皿を見つけたりする楽しみがある。上から横から近くからと、いろいろなアングルで描かれているのがおもしろい。
特に、カッパたちが噂をしている様子、落ち込んだカッパーノがお月さまにお祈りをする姿など、「いかにも」な描写がどこかとぼけていて、逆におかしみがあるのです。
そして、読者が何よりも心惹かれるのは、カッパーノその人(カッパ?)かもしれません。一見気取りやさんですが、真面目で一生懸命で、実に素直だというのが伝わってきます。私は、その百面相に、愛おしささえ感じてしまいました。
自分の大切にしているものを失った挙句、みんなに後ろ指をさされるようになってしまったショックは、計り知れないことでしょう。でも、カッパーノはくじけない! そんなカッパーノは、ついつい応援したくなってしまいますし、成長はやはりうれしいものです。
カッパという日本の妖怪が主人公なのに、テイストはあくまでイタリアン。ふしぎ楽しい設定ですが、お正月明けに「和」の絵本を読みたい、でも少し飽きてきたかな…… というときにもおすすめの、楽しい楽しい絵本です。
にこっとポイント
- カラスにお皿を奪われてしまったカッパのカッパーノが、お皿を探して旅をするお話です。カッパーノの勇気と根気と愛らしさに、あたたかな気持ちになります。
- ユーモアたっぷりでたくさん笑えますが、文章・絵・登場人物それぞれに魅力があって、実に「いい」絵本だと思います。元気になりたいときに、おすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)