『山のおふろ』村上康成、徳間書店、2003 amazon
一面雪の裏山に、クロスカントリースキーをはいて、散歩にきた「私」とお兄ちゃん。森の中で、動けなくなった小さなトガリネズミを見つけました。
手のひらでそっとくるんであたためてあげると、元気になったトガリネズミは、雪道をチョロチョロツンツン走っていきました。
「まってー!」と、ふたりが追いかけていくと……。作者・村上康成さんが描く、大自然を舞台に繰り広げられるファンタスティックな物語は、とても魅力的です。
ページを開くと、まず目に入ってくるのは、真っ白な雪山と動物たちの足跡です。主人公のきょうだいは、左端に小さく描かれています。そのため読者は、たっぷりと「自然」を感じることができます。
また、物語の後半に登場する山のおふろの湯気にも、特徴があります。湯気を描くときには、白色かそれに近い色を使用することが多いと思うのですが、この山のおふろは、淡いピンク色や緑色で描かれています。あたたかいこの色遣いは、「山の中にあるふしぎなおふろ」に、ぴったりです!
そして「ゆげが もうもう」とたっている中、うさぎやくまの耳の一部やシカの角がぴょこんと出ている場面などには、おふろの中に、どんな動物たちが入っているのか想像しながら、とてもわくわくします。
一緒に山のおふろに入ったかのように、心がぽかぽかする絵本です。
にこっとポイント
- 雪の中で動くことができなくなったトガリネズミを助けたきょうだいの物語です。
- おふろの場面で、とっても小さく描かれている動物たちにも注目です。
- ページを左右に広げることができ、ワイドな絵を楽しめる場面もあります!
(にこっと絵本 SATO)