「いないいないばあは自分でできるので、別の赤ちゃん絵本を教えてください」と、リクエストをいただくことがあります。
確かに「いないいないばあ」は、日本だけでなく世界中で親しまれている手遊びです。赤ちゃんや小さな子は本当に喜んでくれますし、した方もその笑顔にとろけてしまいますよね。
でも、あえて絵本で読む良さというのもあるんです。それは、赤ちゃんと一緒に驚いたり、一緒に喜んだりできること!
どちらかだけではなく、どちらも楽しんでいただきたい― というわけで、絵本『いないいないばあ』の手遊びとの違いをご紹介します。
絵本『いないいないばあ』の手遊びとは違う味わい
ロングセラー『いないいないばあ』は、いろいろな動物がいないいないばあをしてくれる絵本です。
『いないいないばあ』松谷みよ子文、瀬川康男絵、童心社、1967、amazon
たとえば最初は、ねこのにゃあにゃ。「いない いない……」ときて「ばあ」でページをめくると、にゃあにゃが隠していた顔をばあと出します。
赤ちゃんたちは、はじめは不思議そうに、慣れてくるとワクワクしながら「ばあ」を待つようになります。そのうち、「あっあっ」と声が出てきたり、指さしをするようになったり……。
さらに、絵本を読んでくれる人の顔を見上げたり見つめたりする様子は、まるで「これ、おもしろいね」と言っているかのよう。こうなってくると「意思疎通ができた!」と大人の方が盛り上がってしまいますね。
これらの味わいは、目の前にいる人が隠れてしまう、不安と期待を楽しむ手遊びのいないいないばあとは、全く違うものではないでしょうか?
もっと知りたい絵本『いないいないばあ』のこと
『いないいないばあ』をおすすめする理由は、まだまだ他にもあります。
ことばを一見するだけではごく普通の「いないいないばあ」のようですが、声に出してみると「ほらほら」など、やさしく赤ちゃんに語りかけるようなことばが含まれ、声がまあるく響きます。
赤ちゃんとの時間をそっと包んでくれるような、ソフトな色もとてもきれい。ちなみに、色が淡いという理由で敬遠されることもありますが、輪郭がはっきりしているので、ご心配はいりません。
しかも、実は、動物たちのしっぽやねずみの動きにも工夫があるんです。絵本の絵をよーく見ている子どもたちが少し大きくなった頃に、はっと気づく瞬間が訪れます。大人としては、同じ絵本を読み続けることで成長を感じられて、それもまたうれしいものです。
赤ちゃんの反応が悪いのはどうして?
赤ちゃん絵本の定番であり、思い出の絵本であるというお父さん・お母さんも多いためか、「生まれてすぐに読んであげたけれど、反応が今一つだった」というご相談(や、がっかり談!)が寄せられることもあります。
私は、『いないいないばあ』を読むのは、身のまわりの物への関心が強くなったり、大人の顔を見るようになったりする頃をおすすめしています。個人差がありますが、8・9ヶ月頃にあたることが多いようです。
手遊びのいないいないばあも、あやすときに自然としていますが、生まれたてよりも、数ヶ月たってからの方が、反応がいいと思いませんか? それは、赤ちゃんの目がよく見えるようになり、記憶力が発達しているからです。
ごく小さな頃は、絵本は読む人と聞く人をつないでくれるツールのようなものでもありますから、赤ちゃんと一緒に楽しく過ごせればそれでよいのです。でも、反応が悪いと思ったとき、もし読んでいる月齢が低ければ、もう少し待ってもいいかもしれません。
今は、本当に数多くの赤ちゃん絵本があります。お好きなものを楽しく読むのが一番ですが、『いないいないばあ』は、「自分でできるから」という理由で手にとらないのはあまりに惜しい絵本だと思います。
手遊びも絵本も、両方楽しんでいただけたらうれしいです。
にこっとポイント
- いないいないばあは、手遊びにも絵本にも、それぞれの楽しさがあります。ぜひ両方をお楽しみください。
- 生後間もなくの赤ちゃんと読んで反応が悪いと感じたときは、もう少し大きくなるまで待ってみてもいいでしょう。
(にこっと絵本 高橋真生)