「お茶を一緒に楽しむ」― 当たり前にできていた日常の行為が、今、難しくなっています。
一緒にお茶を楽しむために、連絡を取り、予定を合わせ、場所を決め、着ていく服を選び、相手の好きそうなお話のネタも仕入れて、そして、会って、笑い合って、楽しいひと時を過ごす。
「またね」とか「次は〇〇にね」とか約束を交わし、それぞれの日常に戻る。
そんな豊かな人とのふれあいの時間が、今はとても愛おしく感じるのです。
今日ご紹介するのは、『いろいろおせわになりました』。
『いろいろおせわになりました』やぎゅうげんいちろう作、福音館書店、2008 amazon
ページは3部で構成されていて、
「おちゃをのみにきてください」
「はい こんにちは」
「いろいろおせわになりました はい さようなら」
と繰り返されます。
単純な繰り返しですが、いえいえ、よーく絵を見てください。出会った人の何かの影響を受けて、お互いに変化しているところがあるんです。
たとえば、靴を交換したり、髪型をまねてみたりと、相手の魅力的な何かを受け取っていく。
出会うこと。交わすこと。共に過ごすこと。
当たり前だけど、本当は当たり前でない、大切な時間をこの絵本は教えてくれたのでした。
にこっとポイント
- 当たり前だけど、本当は当たり前でない、大切な時間をこの絵本は教えてくれたのでした。
- 「おちゃをのみにきてください」はわらべうたの節です。絵本の中に楽譜もついていますので、ぜひ歌い読みしてみてくださいね。
(にこっと絵本 森實摩利子)