人生でふと訪れる、始まりと終わりが重なる季節。がんばってきた日々に、ひとつの区切りが見えてくるとき。
知らず知らずのうちに、「ちゃんとしなきゃ」「次に進まなきゃ」と自分を追い立ててしまう時期でもあります。
そんなときに、この『ちょうちょのために ドアをあけよう』をひらくと、子どもの声がこんなふうに言うのです。

『ちょうちょのために ドアをあけよう』ルース・クラウス作、モーリス・センダック絵、木坂涼訳、岩波書店、2018 amazon
そんなに つかれたっていうならつかれをポイって すてちゃえばいいのよ
あまりにも軽やかで、あまりにも大胆。でも、その無邪気さに、はっとさせられます。
私たちは、「疲れ」を大事に抱えすぎているのかもしれません。手放してもいいものまで、責任や努力の証のように握りしめてしまう。
この絵本は、解決策を与えてくれるわけではありません。ただ、世界を少しだけ斜めから見せてくれます。
おおごえで うたう うたを ひとつくらい おぼえておくと いいよ ぎゃーって さけびたくなる ひの ために
泣きたくなる日には歌を。叫びたくなる日にも歌を。そして、くたびれた日は——ポイっと。
ユーモアは、知恵。子どもの目線に立つと、世界は思ったよりやわらかいことに気づきます。
きっと手に取る人それぞれが、今の自分に必要なひと言と出会えるはずです。春の入り口で、心の荷物をひとつ軽くしてくれる、とびきりキュートな一冊です。
にこっとポイント
- リズミカルなことばとモーリス・センダックのチャーミングな絵で、子どもの目線から世界を愛情深く描いていきます。他書『あなはほるもの おっこちるとこ』の名コンビによる、読むたびに好きになる絵本です。
- 子どもの目線で見つけた、小さくて大切な知恵の数々。読者はそのことばに耳をすませながら、自分自身の「今」にも重ねていくことができます。
(にこっと絵本 Haru)









