小さなつぶから生まれた、小さな小さなちび竜。水たまりから、飛び立って、たくさんの生きものに出会います。
『ちび竜』工藤直子文、あべ弘士絵、童心社、2019 amazon
たんぽぽには、「ハネが まだ よわいから わたげと いっしょに とんだら どうかしら?」とアドバイスをもらいました。そしてとんぼからは、飛び方やハネの手入れの仕方や「ハネたいそう」を、フナからは「うろこ通信」のやり方を教えてもらいます。
ちび竜は、そんなふうに、植物や昆虫や動物等の様々な生きもの、風や水や土といった大自然とも仲良くなっていくのです。
さあ、ちび竜は、どのような竜になるのでしょうか?
読んでいるうちに、ちび竜を応援したくなったり、ちび竜が生きていくための力を育ててくれる周囲の生きものたちの大切さを感じたり……。子どもだけではなく、大人も、心を動かされる絵本です。
文は、声に出して読みたくなるほど、リズミカル。「ぴんぴん おどっていた」「ぷ~ん と とんで」「ぱったた・ぱたた と クンレンしていたら」等と表現が豊かなので、読者も、ちび竜や生きものたち、情景を鮮明にイメージすることができます。
また絵も、白黒に、水たまりの水色や鹿のツノの黄色など、場面ごとにポイントとなる色を重ねているので、とても印象に残ります。
裏表紙に描かれた、身体がおさまりきれないほど大きくなった「ちび竜」の鱗にも力強さを感じますが、「成長した、竜の顔も見たい」と思った方は、ぜひ絵本を開いてみてください。大きくページを縦に開いて見る竜の姿は、驚くほど壮大です!
にこっとポイント
- 小さなつぶから生まれたとっても小さな「ちび竜」が、どんどん大きくなって立派な「でか竜」になるまでを描いた成長物語です。
- 工藤直子さんのリズミカルな文と、あべ弘士さんの力強い絵のコラボが、素敵です。
(にこっと絵本 SATO)