いたずらっこのピーターラビットは、おかあさんの言いつけを破ってマクレガーさんの畑に忍び込みます。
『ピーターラビットのおはなし』ビアトリクス・ポター作・絵、石井桃子訳、福音館、1971 amazon
思うままに野菜を食い荒らしていたところに、マクレガーさんに出くわしたから、もう大変。なんとかピンチをくぐり抜け、命からがら逃げ出したものの、上着と靴をなくしてしまいます。
その晩寝こんでしまったピーターに、お母さんは、カミツレの煎じ薬を飲ませてくれるのでした。
ピーターラビット、お楽しみポイント3選
青いジャケットを羽織った愛らしいうさぎの姿を、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。
「でも、絵本はちゃんと読んだことがない」という人は、もったいない! 見逃してほしくない、ピーターラビットのお楽しみポイントをご紹介します。
1.いるいる、こんな男の子!
「ピーターったら、この2しゅうかんのうちに、うわぎを2まいと、くつを2そくも なくしてきたのです!」
子どもの上着、靴下がいつの間にかなくなっている。しかも、「どこやったの?」と聞いても「知らない」しか言わない……。なんて経験がある親御さんもいらっしゃるかもしれません。
ピーターをはじめ、シリーズに登場する動物の子どもたちは、怖いもの知らずのやんちゃ揃い。親となった身で読んでいると、「うちの子と同じ!」なんて気持ちになることも。
また、いつの間にか物をなくしてきたり、大人の知らないところで大冒険をしていたり、子どもって、親の手の届かないところへどんどんいってしまいますよね。そんな時、ピーターのお母さんのように、穏やかに受けとめてあげられたらいいな、とこの絵本を読んで感じています。
2.何を考えているの? 動物たちをじっくりと眺めてみて
ピーターラビットシリーズの登場動物たちは、毛なみまで細やかに本物らしく描かれています。擬人化され、服を着て二足歩行をしていても、それが本当に愛らしい!
これはもう、作者の表現力のなせる技です。
また、動物たちは、口を大きく開けて話すなど誇張された表現がなされることはなく、動物らしい表情は崩しません。でも、その仕草や目線の運び、美しい語りから、その心の動きがよく伝わってくるのです。
3.シニカルに描かれた、ピーターの生きる自然界のシビアさ
いたずらっこのピーターと、畑を守りたいマクレガーさんとの攻防は、面白おかしいコメディではありません。ピーターのお父さんは、「マクレガーさんのおくさんに にくのパイにされてしまった」のであり、ピーターの逃亡劇は、真に迫るものがあるのです。
わたしも、子どもの頃に読んだときには、マクレガーさんが迫ってくる恐怖と焦燥感に、ピーターと同じ気持ちになって絵本を握りしめた思い出があります。
ピーターラビットシリーズでは、人間と動物の攻防や関係性、自然界の残酷さが、シニカルに描かれています。その嘘のない動物たちの世界に、自分も入りこんでお話を楽しむことができるのです。
ちなみに、昔ながらの「教訓」を感じさせるお話も多くあります。お子さんがどう感じながら読むのか、感想を聞いてみるのも面白いですね。
ピーターラビットの世界へ! おすすめのお楽しみコンテンツは?
映画
「ピーターラビット」
ピーターラビットの初の実写映画。原作の雰囲気を損なわない、毛並み豊かで愛らしい動物たちの描写は、原作ファンも納得がいくはず。マクレガーさんなど、映画化に伴う設定変更や原作からは思いも寄らない奇想天外な展開はありますが、くすっと笑えるコメディ要素もあり、子どもも大人も楽しめます。
2021年には、第2弾も上映されるとのこと。現代のピーターラビットのお話として楽しめるはずです。
「ミス・ポター」
ピーターラビットの作者、ビアトリクス・ポターの半生を描いた映画です。ピーターを世に生み出した作者の人生や、取り巻く環境を知ることで、さらにピーターラビットシリーズを楽しめるようになるはずです!
また、一人の女性の半生を描いた一つの作品としても、観ていて感動を禁じえません。
雑誌
「MOE」(2020年6月号)
専門家により、ピーターラビットの世界が詳しく解説されており、さまざまな観点からピーターラビットを楽しむヒントをもらえます。もともとファンだった人も、あまり詳しくなかった人も、ピーターラビットの虜になること間違いなしです!
カフェ
自由が丘と横浜に、ピーターラビットカフェがあります。原作にちなんだお食事メニューや、とても可愛いスイーツがたまりません。なんと、「ピーターラビットのお父さん?のパイ」なんていうメニューまであります。
→ ピーターラビットガーデンカフェ http://www.peterrabbit-japan.com/cafe/
にこっとポイント
- 手に持ちやすく、お子さんにも手に取りやすいサイズです。少し文章が長いので、大人が読み聞かせて、一緒に味わってみるのもよいでしょう。
- シリーズの『5.モペットちゃんのおはなし』『6.こわいわるいうさぎのおはなし』は、文章も短く、小さいお子さんでも読みやすいです。また、『9.まちねずみジョニーのおはなし』は、イソップ童話「いなかのねずみまちのねずみ」をベースにしたものなので、もともと知っていればさらに親しみやすいかもしれません。
- なんとなく知っているだけではもったいない、ピーターラビットの魅力にあらためて触れてみてください。
(にこっと絵本 Haru)