PICK UP! みんなでワイワイ読みたい絵本
富士山にのぼる

『富士山にのぼる 増補版』石川直樹作、アリス館、2020 amazon

『富士山にのぼる』の著者は、22歳で北極から南極まで人力踏破し、七大陸最高峰登頂を23歳で成し遂げた石井直樹さん。

この絵本は、冬の富士山を登る視点で、富士山の自然やその成り立ち、人々の信仰にまで目を向け、雄大な富士山の新たな魅力を教えてくれます。

雄大な富士山のさまざまな姿を体感する

関東圏のわが家では、遠くに頭をのぞかせている富士山が、その峰に雪を積もらせているのを眺めるのが、冬の楽しみとなっています。

わたしたちの暮らす日本を象徴する、富士山。富士山が見える地域にお住いの皆さんは、各地から、富士山の様相に季節の移り変わりを感じているのではないでしょうか。

『富士山にのぼる』では、雄大な富士山の写真を通して、冬の富士山を味わうことができます。「ザクッザクッ……キシッキシッ……」。ページをめくっていると、私たち自身も、かたい雪を踏みしめながら、息を吐いて、吸って、自分の足音と呼吸だけを感じながら富士山を踏破していく感覚を追体験できるようです。

また、富士山での食事、テントでの夜、裾野に広がる原始の森というように、実際に登ってみなければわからない、富士山の姿を知っていきます。

樹海、こんこんと湧き出てくる水の流れ、たくさんの洞穴、赤黒い岩肌の合間から顔をのぞかせる高山植物たち― 大きな自然の神秘の中で新たに自分を見つめ直し、次への一歩を踏み出す勇気をもらえるような気がします。

絵本のラストは、このように締めくくられています。

背中を押すように吹きつけてくる強い風に身をまかせて、ぼくはまた、一歩をふみ出した。

一歩一歩、着実に。歩みを進めるその背中を押してくれるような力強さが、この絵本にはあるのです。

にこっとポイント

  • いつも遠くから眺めている富士山の姿とはまた違う本来の姿を知り、新しい世界に出会うことができます。
  • 見返しやカバーには、「富士山ってどんな山?」と、暮らす動植物から地盤の構造、それを取り巻く天気など詳しく知ることのできる写真や図もある解説がついています。作者の装備一式も、興味深く読み込んでみたくなるポイントです。

(にこっと絵本 Haru)

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