PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

「ふつう」って何でしょう?

日常でよく使うことばかもしれませんが、改めて意味を問われると、説明がなかなか難しいな、って思うのです。

ぼくのつばさ

『ぼくのつばさ』トム・パーシヴァル作、ひさやまたいち訳、評論社、2017 amazon

『ぼくのつばさ』のノーマンは、ごく普通の男の子。

ところがある日、背中に翼が生えてきました。空を飛んでみると、とっても気持ちがいい!

だけど、両親や友だちは、翼が生えた自分をどう思うでしょう? だって、みんなはノーマンのことを「普通の子」だと思っているのですから。

それで、ノーマンがどうしたかというと、彼は「翼を隠す」ことにしたのです。

でも、やってみると暑いし、思い切り遊べないし、とっても大変。そのうちノーマンは、うんざりしているのは生えてきた翼ではなく、それを隠すために着込んだコートだということに気づきます。

思い切ってコートを脱ぎ、翼を伸び伸びと広げるノーマン。自分を覆い隠すものから自由になって、ノーマンは空に飛び立ちました。

空から下を見ると、重いコートを着た子どもたちがノーマンを見上げて、互いに顔を見合わせています。

そしてそのうちに、あたりは空を飛ぶ子どもたちで、いっぱいになったのでした。

子どもは、「違いに気づく」という成長の後、「それを受け入れ、自分らしくいるとはどういうことか」を探求し始めるものです。

卒業シーズンです。

未来に向かって一歩を踏み出す方に、読んでほしい作品です。

ぼくのつばさ_裏表紙

にこっとポイント

  • ある日突然、背中に翼が生えてきた「普通」の男の子のお話。未来に向かって一歩を踏み出す方に、読んでほしい作品です。
  • 表紙は蛍光のオレンジでパッと目を引く上に、大型な版型であるこの作品。ページをめくると、カラーの部分とモノクロの部分に分けて描かれています。ノーマンの心情が「色」にも表現されているよう。ぜひ作者の意図した色遣いにも注目してみてください。

(にこっと絵本 森實摩利子)

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