『はんぶんライオン』大原悦子文、猫野ぺすか絵、福音館書店、2023 amazon
『はんぶんライオン』は、2023年度最後の月刊こどものとも(3月号)です。表紙には、顔の左半分だけにたてがみのあるライオンが描かれています。何となく気品があって凛! とした雰囲気が伝わります。
このライオン、実はぬいぐるみ職人によって作られたものなのですが、職人が高齢になったために、お店を閉じることになったのに加えて、完成させるべきたてがみの材料も足りなくなってしまったのでした。
職人のおじいさんは、はんぶんライオンを自宅に連れて帰り、見習いの頃に練習として作ったウマ、オンドリ、ネコのぬいぐるみと共に出窓に飾ることにしたのです。
はんぶんライオンは、その時におじいさんが言った「いいかい。だれが なんと いおうと、おまえは つよい、りっぱなライオンだよ。わたしと、わたしの いえを しっかり まもっておくれ」という言葉をしっかり守り、ある晩侵入した泥棒を追い払うことができたのでした。
初めて読んだ時は「はんぶんライオンが、この3匹にいじめられるのでは?」と思いましたが、ライオンは、ウマ、ネコ、オンドリたちにいろいろ教わりながらも、凛としているのでした。
折り込み付録に掲載された、作者である大原悦子さんの言葉が印象に残っています。
…… 彼は毅然とした態度で応じます。ただ突っぱねるのではなく、相手の良いところは見習い、そこから学ぼうともするのです……
早速、保育園の子どもたちに読んでみました。年長向けの絵本ではありますが、3歳児クラスの子どもたちにも読みました。読み終わった後、すぐに一人の子どもから「かっこいい!」という発言があり、読み手として嬉しく、かつ励まされた言葉でした。
にこっとポイント
- 半分だけたてがみのあるライオンが、家に侵入した泥棒を追い払います。たてがみが半分しかなくても、凛としたその姿に子どもから「かっこいい!」という声があがりました。
- とても丁寧に描かれた絵も、絵本のお話を良質なものにしています。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)