『ウエズレーの国』ポール・フライシュマン文、ケビン・ホークス絵、千葉茂樹訳、あすなろ書房、1999 amazon
ウエズレーの住む町は、同じ形の家に、同じ髪型、みんなが「同じ」な町。
そんな中、ウエズレーはいつも一人はみだしています。
みんなが好きなピザやコーラもだいっきらいで、サッカーにも興味がないというウエズレーのはみだし具合は、親も心配するほどです。
でも、ウエズレーはまわりのことなんか気にしません。ちょっかいを出してくるいじめっ子たちにも、得意の発明で応じて歯牙にもかけない様子です。
そんなウエズレーに、畑に飛んできた種との出会いがありました。小さな発見をきっかけに、種から「じぶんだけの文明」をつくるという自由研究に、ウエズレーはひと夏を費やすのでした。
自分の好きなことを掘り下げるのって、気持ちいい!
ひとつの種との出会いから、ウエズレーの研究は「文明」ひいては「ウエズレーの国(Weslandia)」へと発展していきます。
育った植物で、ウエズレーはさまざまなものを開発します。
衣服をつくり、食べ物として活用し、それをもとに商売をします。さらに、独自の言語に、オリジナルのスポーツ、そこに人が集まり、仲間が増えて― そう、まさにひと夏のあいだにウエズレーはひとつの国を創造していったのです。
彼の原動力は、なによりも「知りたい!」「楽しい!」という思いだったのでしょう。自分の興味を満たし、やりたいことにとことん没頭した彼は、本当に幸せそうで満たされています。
そして、ページをめくるわたしたちも、探究心に満ちたワクワクした思いを彼と一緒に感じ、充実したひと夏の爽快感を味わうことができるのです。
この絵本を読む人はみな、自分の世界を広げることが楽しみになるはずです。
自分には何ができるんだろう。何に挑戦してみよう。
そんなワクワクに満ちた夏を、ぜひみなさんにもお届けしたい。そんな思いで、この絵本をおすすめします。
にこっとポイント
- まわりに流されずに自分を持つ強さを、ウエズレーは教えてくれます。自分をしっかりと見失わなければ、いつか仲間も集まってくる、そんな勇気と希望を彼は教えてくれます。
- 自分の好きなことにとことん挑戦する、その気持ちよさと無限の可能性をこの絵本から感じることができます。大人も子どもも、ワクワクに満ちた夏の「自由研究」に取り組みたくなるはずです。
(にこっと絵本 Haru)