『どんなかんじかなあ』の表紙では、笑顔の少年が正面を向いています。何かいいことがあったのでしょうか?
『どんなかんじかなあ』中山千夏ぶん、和田誠え、自由国民社、2005 amazon
続いて中表紙。多分、表紙の男の子でしょう、黒い影になっていて、目を閉じているのがわかります。そして頭の部分には、何やらわからないものがちりばめてあります。
実は、この男の子には、目の見えない友だち、耳が聞こえない友だち、阪神大震災で両親を亡くした友だちなどがいるのでした。
そして、そのいろいろな友だちの状態を、たとえば目を閉じて過ごしてみるとか、耳栓をして過ごしてみるとかして、自ら体験します。
そして、様々な「すごい!」ことに気付くのです。
目が見えないって、すごい! 沢山の音が聞こえる!
耳が聞こえないってすごい! 沢山のものが見える! というように……。
中表紙に描かれた、何かわからないものは、この「すごい!」がいろいろな形になったものだと思いました。
最後明らかにされるのは、この少年のことです。読者は驚き、同時に感動します。
今、SNSへの誹謗中傷の書き込みが問題になっています。「もし、自分がされたらどんな気持ちになるのだろう?」と考えてみれば、悲しい結末にはならないのではないでしょうか。
かなり前のことですが、私の知人が「人からされてうれしかったことは、人にもやってあげる。人からされて嫌だったことは、決して人にはしない」と教えてくれました。決して難しいことではないと思います。
みんな仲間です。友だちです。家族です。
自分の周りにはいろいろな方がいること、相手の気持ちや立場になってみることを通してより深くその人のことを理解することができるということに、改めて気付かされると思いました。
にこっとポイント
- 自分の周りにはいろいろな方がいることに、改めて気付かされる絵本です。
- 小学生にはぜひ読んでほしい絵本です。同時に大人の方々にも。
(寄稿:絵本専門士<東京都>鴫原晶子 / 保育者養成校講師 )