PICK UP! ハロウィンに読みたい絵本
そらをとびたかったペンギン

『そらをとびたかったペンギン だれもが安心して存在できる社会へ』申ももこ作、shizu協力、はやしみこ絵、佐藤恵子解説、学苑社、2017年 amazon

ペンギンのモモは、トリたちの集まる森が大好きでした。

そらをとびたかったペンギン_中ページ

でも、モモはみんなのように飛べないし、おしゃべりも上手にできません。みんなに合わせようとがんばると、だんだん苦しくなってくるのでした。

悲しくなったモモは、みんなから遠く離れようと思い、湖に辿りつきます。そこで水に入ってみると― 「じゆうに うごける!」。さらに、モモによく似ている子にも出会うことができました。

悲しみがとけて消えていったとき、モモは元いた森の友だちに、改めて「水の外では…… ゆっくり…… ゆっくりなんだ」と、自分のことを一生懸命話してみるのでした。

今の場所が全てじゃない。一人ひとりに合ったサポートを

自分がまわりと同じペースで、同じことをできないことに、もがき苦しんでいたモモ。でも、自分の適性にあった過ごし方のできる場所を見つけたとき、目の前が開けたように、生き生きと自分を表現することができるのでした。

作者は、自身もパニック障害、うつ病を発症し、不登校を経験した過去があります。また、自閉症スペクトラムのお子さんと向き合う中でこの絵本を生み出しました。

他にもこの絵本には、多くの人が関わっています。『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』の作者shizuさんが協力したり、様々な専門家がこの絵本に言葉を寄せたりと、モモのような人たちへ手を差し伸べているのです。

自分の居場所を求め葛藤するのは、もちろん、障害を持った人ばかりではありませんよね。

性別、年齢、特性、さまざまな個性を持つわたしたちの誰もが、モモのように「自由に動ける」、つまり、自身が輝ける生きやすい居場所を求めているのだと思います。

自分の居場所を求めて葛藤を抱えたモモの姿を追っていくこの絵本が、不安を抱えた子どもたち、そして大人の心にもすっとしみてくるのではないでしょうか。

一人ひとりに合った対応と居場所が、望めば手に入る世の中になりますように。

お互いに理解し、支え合える世界であることを目指して。どんな人にも手に取ってほしい絵本です。心をふっと軽くしてくれるような、勇気をくれますよ。

にこっとポイント

  • あたたかなかわいい絵柄ながら、一人ひとりの居場所を肯定し、葛藤を抱える人に手を差し伸べてくれるような絵本です。
  • 障害や特性をどのように理解し、つきあっていったらよいか、専門家の解説も巻末にまとめられています。

(にこっと絵本 Haru)

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