PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

夜明け。朝露に濡れたきゃべつの葉っぱが、朝の光で虹色に光り始めると、きゃべつ畑の一日が始まります。

『きゃべつばたけのいちにち』は、夜明けから月ののぼる夜、そしてまた始まる朝へと、きゃべつ畑の一日を描いた、まるでドキュメンタリーのような絵本です。

きゃべつばたけのいちにち

『きゃべつばたけのいちにち』甲斐信枝作、福音館書店、1976  amazon

きゃべつをかじる青虫、その青虫を狙うアシナガバチ。卵を産んで力尽きたモンシロチョウや、寄生虫にやられて死んでしまった青虫を食事として巣に運んでいくアリ― きゃべつ畑は、各々が生きるために生活する場所、つまり日々生のやりとりが行われている場所でもあります。

絵本には、きゃべつを食べる生きもの、またその生きものを狙って集まる生きものたちというように、弱肉強食の世界が容赦無く描かれていて、大人でも少しショッキングなくらいです。

でも、それが生きものたちの日常であり、事実なんですよね。

普段、お店で出会う土のついたきゃべつ、料理をしていると葉の間からでてくる青虫も、実は生きものたちの「生」の一部なのだと、改めて気づかされます。またそのように生きものの生の一端に触れることで、この絵本の一日をより近く感じるような気がしました。

朝露に濡れる朝、雨に打たれるきゃべつの葉に、夕焼けに染まるきゃべつ畑。あたたかな画風で、いきいきと描かれた心に響く情景は、どの場面をとっても生きものと共にあり、生の喜びに出会えたように美しく感じられます。

にこっとポイント

  • きゃべつ畑で生活する生きものたちの姿を、一日を通して追える絵本です。キャベツを取り巻く生きものの命の営みを知ることができます。
  • 作者は、植物や生きものたちへ真摯な目線を向けた作品を多く出している甲斐信枝さんです。『つくし』『たんぽぽ』『ざっそう』など、他の作品もおすすめです。

(にこっと絵本 Haru)

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