冬ごもりをしているくまの親子のお話です。
『ぽとんぽとんはなんのおと』神沢利子さく、平山英三え、福音館書店、1980 amazon
こぐまたちは、大きな母さんぐまに守られながら寒い冬を穴の中で過ごし、少しずつ大きくなっていきます。
そのうち、こぐまたちは外から聞こえてくる音に興味津々、そして聞くのです― 「……なんのおと?」。母さんぐまはその一つ一つに丁寧にやさしく答えてあげます。
大きくてやさしい母さんぐまと、こぐまたち。タイトルの「ぽとんぽとん」は何の音だったのでしょう。
私は、毎年3月になると、幼稚園や保育園の子どもたちとこの絵本を読みました。真剣に見ている子どもたちに、心の中で「あなたたちも大きく大きくなってね!」とエールを送りながら。
くまの親子の会話の微笑ましさと丁寧なことばづかいに、読んでいる者の心の中の冬も雪も溶けていくようです。
暖かい春がやってきて、やっと穴の中から外へ出たこぐまたちは、もうしばらく母さんぐまに守られて成長して行くのでしょう。
穴の外にはかたくりが咲いています。くまの親子たちはどこへ行くのでしょうか。春の日差しのまぶしさが伝わります。
にこっとポイント
- 冬ごもりをしているくまの親子のお話です。母さんぐまとこぐまたちの表情が場面ごとに変わります。暖かさと安心感がある絵本です。
- 大人には、動物たちが一生懸命に生きていることが伝わってきます。山に住んでいるはずのくまが街なかに現れて大騒ぎをしたニュースを耳にしますが、本文では触れられていませんが、命についても考えさせられる絵本だと思います。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)