小さな女の子が小さな弟に言いました。「はるになったら、おはなを たくさんつんできて、はなたばを つくってあげる」。
こんなふうに、自分の経験や感動を伝えてあげたい、と誰かを思う瞬間が皆さんにはあるでしょうか。海へ行ったら、巻貝を拾ってくるよ。映画に行ったら歌を覚えてきて、まねして歌ってあげる……。
『はるになったら』では、お姉ちゃんが、小さな弟へしてあげたいことが、愛情いっぱいに紡がれていきます。
『はるになったら』シャーロット・ゾロトウ文、ガース・ウィリアムズ絵、おびかゆうこ訳、徳間書店、2003 amazon
その一つ一つの場面には、いまだ幼い女の子の、自分よりも小さな存在を愛しむ心があふれているのです。今まで与えられる側だった自分が、少し背伸びをしてやってあげる側になる、そんな成長の喜びも感じられます。
新年度を迎えると、環境が変わったり、節目を迎えたりする人も多いことでしょう。
そんなときに、ちょっと背伸びをしながらも、そのステージを楽しみながら進めたら。心の中に、愛情を感じる誰かを思い浮かべながらその場に臨めたら。きっといつもよりもその足取りは軽く、楽しいものになるのではないかな、と思います。
誰かを思いながら一歩一歩自分の歩みを進めているとき、きっと心は一人ではないはずです。また、その心のつながりを信じられたら、わたしたちも成長していけるでしょう。この絵本は、そんな前向きな気持ちにもさせてくれるようです。
にこっとポイント
- 小さなお姉ちゃんが、小さな弟にしてあげたいことが紡がれていきます。優しい愛情のこもったことばを聞いて、穏やかな気持ちになれます。
- 絵は、『しろいうさぎとくろいうさぎ』を描いたガース・ウィリアムズさん。しっとりと愛情あふれるシャーロット・ゾロトウの優しい詩とあいまって、春風をふわりと感じさせるような絵本になっています。
(にこっと絵本 Haru)