ラチは、世界中でいちばん弱虫でした。飛行士になりたいと思っていましたが、今のままじゃなれそうにありません。
いつも泣いてばかりのラチの前に、小さなあかいらいおんが現れました。
『ラチとらいおん』マレーク・ベロニカ文・絵、とくながやすもと訳、福音館書店、1965 amazon
それから、ラチは、らいおんと毎日体操したり、外に出てみたりしながら世界を広げていきます。ポケットにらいおんがいると思うと、ラチは勇気を出せました。
そしてとうとう、たくましくなったラチは、いじめっ子に勇敢に立ち向かうことができたのです。
らいおんは、そんなラチに、手紙を残して姿を消すのでした。
子どもたちが「らいおん」を必要としなくなる日まで
この絵本を読むと、わたしは教員時代を思い出します。なんだか、らいおんに感情移入してしまうのです。
新入生の頃、玄関で泣いてしまっていた子や手を引いて教室まで連れていった子たちが、6年後にはとても凛々しい顔をして卒業していく―。
そして、私たち「らいおん」は、また「よわむし」の子どもたちの元へいきます。
子どもたちが「らいおん」を必要としなくなるのは、喜ばしいことです。自分の力で道を切り開いていけるのだから。心を占める寂しさよりも、子どもたちの立派な姿を見るうれしさを強く感じるはずです。
わたしも、今は、わが家の「よわむしラチ」たちが成長し、巣立っていく日まで、その手を引いてあげることのできる幸せを、噛み締めたいと思っています。
もうすぐ巣立ちを控えている人たちへ、そしてそれを見送る立場にいる人たちへ、この絵本のことばを送ります。
「らいおんは、ラチを じまんに おもっていることでしょう。
ラチは もう、こわがりません。
だから ラチは、きっと ひこうしに なれるでしょう。」
にこっとポイント
- 子どもの立場からは勇気をもらえ、大人の立場で読むと子どもの成長が感慨深く感じられる、気持ち揺さぶられるロングセラー絵本です。
- 卒業の時期にもおすすめです。
(にこっと絵本 Haru)