春のにおいを深く深く吸い込んで!
『おなべおなべにえたかな?』こいでやすこさく、福音館書店、1997 amazon
気持ちのいいある春の日のこと。きつねのきっこは、突然の用事で出かけてしまったおおばあちゃんの代わりにスープの番をすることになりました。
スープのいいにおいにつられて、どこからともなく集まってくる山の仲間たち。味見のときもピンチのときも、ネズミにモグラ、チョウやアリなどの小さな虫たちまでもが一緒です。
いきいきとした動物たちの動きや表情を見ていると、私たちも少しずつ、心が弾んできますよ。
さあ、スープはどうかな?
山のみんなとおなべの「おなべ おなべ にえたかな?」「にえたか どうだか たべてみよ」というわらべうたのフレーズも、穏やかで明るくて、なんとも楽しい。
いかにも絵本らしい健やかなお話で、いつ表紙を開いても春の心地良さがあふれ出してくるようです。
読み終わった後は、なぜだか、一緒に読んでいる子と目が合います。そして、お互いにっこり。大笑いしたり、すごく驚いたりすることはないけれど、おなべでたっぷりと作られたスープが、私たちの心を、しっかりと満たしてくれるのでしょうか。
さて、おおばあちゃんが「はるの あじがする はるの スープ」と喜んでくれたのは、一体なんのスープだったのでしょうか? ごくり、と喉がなりますよ。
にこっとポイント
- おっとりと明るい雰囲気が魅力的で、幅広い年齢のお子さん・大人の方が楽しめます。
- 「きっこのおはなし」シリーズには、『おおさむこさむ』『やまこえのこえかわこえて』があります。
(にこっと絵本 高橋真生)