PICK UP! 雪と氷の絵本

明日は早く起きなくてはならないのに、なかなか眠れない男の子。ママから教わって、羊を数えてみることにしました。

ひつじシステム

『ひつじシステム』大串ゆうじ作、小学館、2025 amazon

さて、今この記事を読んでくださっているあなたは、眠れなくて、羊を数えたことがありますか?

私はあります。

羊が一匹、ということばと同時に羊が脳内にぴょこんと現れ、消える。羊が二匹、というと一匹目と全く同じ二匹目が現れ、また消える。背景はありません。

つまり私の場合、羊を数えるというのは、完全なる反復作業でした。

眠るためという意図には合っているのかもしれませんが、自分の想像は案外味気なかったのかもしれないとハッとしたのは、男の子のこのセリフを聞いたとき。

「ひつじって どこに いるの?」

そして、ママから「牧場とか」という情報を得た彼の脳内の羊には、背景が付いたのです。おおー!

けれども、眠れない男の子の数える羊たちは、増える一方。108匹を超え、376匹を数えたときには、牧場は羊でいっぱいになってしまいます。

男の子が困ったと思った瞬間、「ミシ… ゴゴゴゴ…」と、なんと羊の重さで地面が傾き始めて……。

さあ、その後は、牧場の下のトンネルを通って、巨大なちくわ(男の子の夜ご飯はおでんでした)の穴を通って、さらにさらにと進んでいきます。

進めば進むほど、おかしくなっていくこの世界。

それなのに、「ああ、こういうシステムで眠れるのね」という納得感のあるラストなのが、すごいのです。

絵は写実的で、しかも細かく描かれています。

そのため、絵本に広がる情景が、より奇抜で怪しげに感じられ、読んでいると、楽しくて、気持ちが高揚してきます(よって、眠る前の読み聞かせには、あまり向かないかもしれません)。

お子さんに「眠れないときは羊を数える」ということを教えたいときはもちろん、数えたい年頃の小さなお子さんにも、眠れない人の気分転換にも、シュールな世界がお好みの方にも…… と、たくさんの人に楽しんでいただける、おすすめの絵本です。

にこっとポイント

  • 眠れないときに羊を数えれば眠れる? 眠れないときの「ひつじシステム」の真相が語られた絵本です。
  • 眠れないとき羊を数えることについては、「sleep(眠る)」と「sheep(羊)」の音の類似性がポイントだとよく言われますね(英語圏発祥の習慣です)。それを知っていても、本当はこういうシステムになっているのでは…… と思ってしまうような楽しさです。

(にこっと絵本 高橋真生)

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