『かぼちゃ人類学入門』は、私が日頃はほとんど手に取ることがない月刊「たくさんのふしぎ」、しかも30年近く前に出版されたものです。
『かぼちゃ人類学入門』(たくさんのふしぎ傑作集)川原田徹さく、福音館書店、1991 amazon
つい最近、大人のためのイベントで読んでもらいました。おかめとひょっとことおぼしきものが、目立つ表紙です。大勢の人たちがひしめき合っているところに、デン! と描かれています。
ここが、かぼちゃ島である。
お話は、この一文から始まります。
かぼちゃ島に住むかぼちゃ人たちの性格や日々の生活、発展と衰退、そして建て直しが、やや偉そうな文言で書かれているのです。
絵がとても細かいので、読んでいただいているときは、俯瞰的に絵を見ていましたが、実際に手に取って見ると、ただ細かいだけではなく、表情や姿勢もそれぞれで面白いし、町の様子にも思わず笑ってしまう……。
たとえば「福音館書店」という本屋さんがあったり、「宝くじ」の特賞が子ぶた三びきであったり、タコの干物は「たくさんのふしぎ」3さつと交換だったり。幸福相互銀行に関しては、読者に反省を促すようなシステムであったりします。
巻末の「ふしぎ新聞」には作者のことばが書かれてありますので、一部を抜粋します。
かしこい人びとが努力しすぎて、世の中があんまりすすみすぎたもんやけ、自分たちのくらしている地球の命が心配になってきたのである。「ぼくらも、かぼちゃ人に学ばにゃいけん」とこのごろ、かぼちゃ人はぶり評判がええんよ。
要するに、超便利になってそれに甘えている現代人への警告の絵本、と言ってもいいのかもしれません。
にこっとポイント
- 思わず笑ってしまう絵本です。超便利になってそれに甘えている現代人への警告と言ってもいいのかもしれません。
- 細かい人たちの表情や動きを丁寧に見ていくと、気づかされるものがたくさんあって、それも面白いです。
- 神保町にあるブックハウスカフェでは、月に一回「はるさんの読み語り時間」というイベントをやっています。そこで、この絵本に出会いました。平日のお昼なのですが、お近くの方はぜひ! いらしてみてください。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)