今夜は、一人。時計の秒針の音がコチコチコチと部屋に響き、すきま風の音がヒュオオオオオと聞こえます。
こたつから立ち上がったそのとき、壁から糸みたいなものが、ほんの少し出ていることに気がつきました。
「ズズ ズズズ」と引っ張ってみると、できたのは「かべのすきま」。そして、その壁のすきまから、ニョキッと足が出てきて……。

『かべのすきま』中西翠文、澤野秋文絵、アリス館、2019 amazon
現れたのは、3人のおばちゃんたち。あっという間に、こたつの上には、おばちゃんたちが持ってきたお菓子でいっぱいです。さて、この後、どうなっちゃうの?
『かべのすきま』は、関西弁のおばちゃんたちとのやりとりが楽しいユーモラスな絵本です。
最初のページでは、こたつで一人本を読んでいる心細そうな主人公の「ぼく」が描かれていますが、その静寂を、壁のすきまから登場したおばちゃんたちが打ち破ります。
ヒョウ柄のタイツに紫のメガネをかけて、トラ顔のシャツを着ているなんて、インパクトが強すぎるおばちゃん!
しかも、「かりんとう たべるか?」「いもけんぴのほうが ええんちゃう?」と世話好きです。
部屋の空気も一気ににぎやかになるそのギャップに、この後どんな展開が待っているのかと、ドキドキわくわくしてきます。
3人のおばちゃんたちのパワーに、初めは圧倒されますが、いつの間にか、主人公の「ぼく」と一緒に、読者も仲間入りしている気分になれるのも魅力です。
「もし、自分の部屋の壁にも、かべのすきまがあったら……?」「もし、この関西弁のおしゃべりなおばちゃんたちが、自分の部屋にやってきたら……?」など、読んだ後にも想像が広がる物語です。
にこっとポイント
- 「かべのすきま」から、関西弁のおばちゃんたちが出てくる不思議でユーモラスな物語です。
- 表情豊かに描かれたおばちゃんたちと、会話中心のテンポのよい展開は、読み聞かせでも楽しめます。
- 「かべのすきま」から、何かが出てきている裏表紙も、お見逃しなく!
(にこっと絵本 SATO)










