PICK UP! 外に出たくなる絵本

福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」には、共感ばかりの私ですが、この絵本は、私にご質問いただいた覚え違いタイトルではかなり上位に入ります。

「スイカから生まれたウマ」「ウマのたまご」、そして「馬太郎」まで、バリエーション豊かな覚え違い。

正解は、『たまごから生まれたウマ』でした!

たまごから生まれたウマ

『たまごから生まれたウマ』谷真介文、赤坂三好絵、佼成出版社、2006 amazon

海に突き出た岬のある村で、仲良く暮らしているおじいさんとおばあさん。

おじいさんは、山でとってきた薪を遠い町まで売りに行くのですが、その重さが心配なおばあさんは、薪を運ぶ馬を買ってやりたいと、朝から晩まではたを織っていました。

ある夏の日、そんなおばあさんの元へ、スイカ売りがやってきます。

スイカ売りは、売れ残った、緑のところが茶色になりかけた大きなスイカを、馬のたまごだと嘘を吐き、おばあさんに売りつけるのでした。

おばあさんは大事にたまごを温めますが、おじいさんはカンカン。怒ってスイカを庭へ投げ捨てます。

けれども、粉々に割れてしまったスイカから、スイカと同じ色をした子馬が、元気よく飛び出してきたのです(よかった!)。

子馬は一太郎と名付けられ、かわいがられて育ちます。

賢く優しく成長した一太郎の活躍は、村や町を通り越し、お城のお殿様に聞こえるほど。

…… 権力者に知られる、ということは、たいてい災難に見舞われることになりますよね。そう、一太郎もそうでした。

でも、大丈夫、この昔話はちゃんと幸せなラストを迎えますよ。

さて、話は冒頭に戻りますね。あくまで私の周りのお話ですが、実はこの絵本、子どもには好まれ、大人には忘れられてしまう傾向にあるように感じています。

それで余計にタイトルがうろ覚えになってしまうのかもしれません。

お子さんががもう一度この絵本を読みたいというと、「地味なお話なのに!」と驚かれる方も多いのです。

でも、穏やかで優しさがいっぱい詰まった、その上ハラハラしても最後には一安心できるこんなお話は、子どもたちは大好きだと思います。

暑い暑い夏です。スイカを食べたら、難しい(?)タイトルに気をつけて、ぜひ絵本を手に取ってみてください。

にこっとポイント

  • スイカの「たまご」から生まれた馬の昔話です。
  • お話も絵も、優しくて穏やかなので、幅広い年齢の方におすすめです。読み聞かせにも適しています。
  • 原話は、鹿児島県沖永良部島のお話です。

(にこっと絵本 高橋真生)

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