PICK UP! とらの絵本

「鬼滅の刃」の大ヒットで、鬼に関する絵本や本について質問をお受けすることが増えましたが、年末におすすめなのは、こちら、『なまはげ 秋田・男鹿のくらしを守る神の行事』です。

なまはげ

『なまはげ 秋田・男鹿のくらしを守る神の行事』小賀野実写真・文、ポプラ社、2019 amazon

見ての通りのすごい迫力! 表紙を見るのもこわいというお子さんもいるかもしれませんね。でも、読んでいるうちに、なまはげのあたたかさと力強さ、そして不思議さに、きっと引き込まれてしまうと思います。

かつて小鹿島(おがしま)と呼ばれたさいはての地、秋田の男鹿半島に伝わる伝統行事「なまはげ」。

甑島のトシドシや能登のアマメハギなどとともに「来訪神 仮面・仮装の神々」として、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。

なまはげは、一見鬼のようですが、実は神様です。ただし、鬼だという説もありますし、なまはげと同じ姿をした「鬼」が神事に登場することもあります。鬼から興味を広げる一冊としてもおすすめです。

なまはげと言えば、大みそかに「泣く子はいねがー!」と荒々しく叫ぶ姿を思い出す方が多いかもしれませんが、この絵本では、なまはげがどこから来るのか、何をするのかを、写真を中心に紹介しています。

なまはげが住むのは、雪深いけれど人里からよく見える、人々に崇拝される山。

大みそかの夜、たいまつをかざしたなまはげの一団が、深い雪を踏みながら、山を下りてきます。暗がりに揺れるたいまつと、炎に照らされる色鮮やかなお面は、いかにも神秘的です。

村へ向かうなまはげは、どんどん勢いを増して、その声はやまびこになるほど。

そしてとうとう、「ウオー! なまはげが来たどー!」

なまはげが、家々を回ります。いつの間にか、手には、斧や鎌や鍬(くわ)が握られていました。包丁は、火にあたってばかりいるなまけ者にできる火だこを切りとるため。

戸や壁をたたき、勢いよく家に飛び込むなまはげですが、最初は主人と新年を迎えるあいさつをしたり、家の主人と家族の健康や農作物のでき具合について話したり。主人は正装で、お膳とお酒を出して、なまはげを迎えてくれます。

そして、シコをふんだり、包丁で頭をなでたりと、さまざまなおまじないもします。

なまはげがいる時間は、緊張と和みがまじわり、人びとを活気づける。
きびしい冬、男鹿半島になくてはならない行事なのだ。

もちろん、「言うごと聞がね、わらしはいねが‼」と子どもを抱きかかえることも。

「どこにかくれても名前をよばれて、見つかってしまう」のは確かにこわい。号泣したり怒ったりしている子どもたちがかわいらしくて、思わず笑ってしまいますが、こんなふうに、なにもかもがいきいきと伝わってくるのは、小賀野さんの写真だからこそなのでしょう。

なまはげの動きや人びとの表情だけでなく、部屋に置いてあるものや暗さまでが、そのまま切り取られています。

巻末には、なまはげの由来や、衣装作りやお面の補修といった準備、お面の種類や古いなまはげ面の紹介といった、年末年始のニュースなどではあまり取り上げられない事柄についてまとめられていて、なまはげという伝統行事の全体像がわかりやすく、興味の幅が広がります。

行事を終えた後の様子についても紹介されているのですが、なまはげが着ていたわらのケデ(衣装)は、集落の神社やほこらで脱ぎ、鳥居や大木に巻き付けるのだそう。そして、夏までには焼いたり畑の肥料にしたりします。

「ここにも新年の祈りがある」と書かれていますが、ケデをまかれた狛犬があたたかそうで、その気持ちに思わず、手を合わせたくなりました。

「豆でいろよ。また来年くるからな」
お山でいつも見守っていると約束して帰る。

災厄をはらい、家を清め、人々を励ます、なまはげ。

この絵本からは、一年の始まりの凛とした空気やすがすがしさ、そして計り知れないものを敬う気持ちが感じられます。

子どもにはなかなか言語化しづらい感情かもしれませんが、絵本を読み終えるころには、猛々しいなまはげの顔に、厳かなあたたかさを受け取っているようです。また、地域に伝わる行事が、今日まで人をどう支え、その地に住む人々を結びつけているかを伝えてくれます。

こわいだけではないなまはげに、ぜひ、出会ってください。

にこっとポイント

  • 秋田の伝統行事なまはげを紹介した写真絵本です。なまはげだけではなく、日本に伝わる鬼・神様・行事について、知りたくなります。
  • 一年の始まりの凛とした空気やすがすがしさ、そして自然や計り知れないものを敬う気持ちが感じられます。

(にこっと絵本 高橋真生)

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