『うし』内田麟太郎詩、高畠純絵、アリス館、2017 amazon
うし うしろをふりかえった
うしがいた
そのうしろにも、うし。さらにそのまたうしろにも、うし。
その うしろのうしろのうしろのうしろのうしも うしろをふりかえった
うしがいた
青い空に、緑の草原の先どこまでも続く、うしうしうしうし……うしのパラダイス。
内田麟太郎さんのリズムのよい詩に、高畠純さんの描く絶妙なテンションの牛たち、最高のタッグの牛の絵本です。
予想を裏切るオチには、大人も子どもも大笑いのはずです。
これぞナンセンス! ただただ牛が溢れていくそのおかしさ
おしりを向けてこちらを振りかえっている「うし」。そのきょとんとした、とぼけたような顔に、まず、ふふっと笑みがこぼれます。
また、だんだんと牛が増えていく、そんな単純な展開のはずなのに、そのことばのリズムや間、音のくりかえしにだんだんと気持ちがのせられていきます。
さらに、絵にもこの絵本の楽しさの秘密が隠されています。
牛たちをよーく見てみると、なんと同じ模様の牛は一頭としていません。一頭一頭、違う模様になっているのです。牛たちが画面いっぱいにあふれるページは、もう圧巻です。
また、緑の草原に、白と黒のホルスタイン、「the牛!」の映えるコントラスト。壮大な草原に、無限に増えていく牛たちの広がりがどこまでも続くように感じられるのです。
大まじめに読む人を笑わせにくる、新春初笑いにぴったりの絵本、丑年の1冊めにいかがでしょうか。
にこっとポイント
- 子どもから大人までおかしさを感じられる、わかりやすくも楽しい絵本です。大勢でも盛り上がれる、読み聞かせにもぴったりです。
- ひしめきあう牛たちの場面には、作者二人のイニシャルが隠されているという遊び心も。牛たちの模様の隅々まで楽しんでみてください。
(にこっと絵本 Haru)