
『へび のみこんだ なに のみこんだ』tupera tupera作、えほんの杜、2011 amazon
冒頭で、暗闇から現れるへび。真っ黒なページから始まり、見開きの白い右ページから黒いへびが現れるのです。
へびは、次々に、いろいろなものをのみこんでいきます。「へび のみこんだ」「なに のみこんだ」とリズムのよい言葉が繰り返されるので、問いかけと答えをクイズのように楽しむことができます。
のみこんだものを、そのシルエットから予想したり、のみこんだものがどんどんと大きなものになっていく変化も楽しんだりできる内容になっています。
着目ポイントは、黒と白のコントラストがうまく利用されたアート表現。「何か」をのみこんだへびの姿は黒いシルエットで、のみこんだ中身はレントゲンのように白く反転したへびの中に見える、といった表現が秀逸です。
ところで、実は、へびがのみこんでいくものを選んだのには、「うるさいから」「ともだちほしくて」「だいすきだから」「つよくなりたくて」−と、それぞれ理由があるのです。
でもよく考えると、うるさいものも、好きなものも、憧れているものも、のみこんで、自分の体の中に取り込んでいくなんて、「どういうこと!?」と背筋が少しゾワっとしませんか。
ヘビがいろいろなものをのみこんでいくことは、もしかして、相手のスキルを自分の能力の糧としていくこと、嫌なことも自分の心で消化していくこと、の比喩表現なのではないか……、なんて深読みもしてみたくなります。
副題にも「やみとひかりとへびのはなし」と記されているので、深く考察したい方は「闇と光」に着目しながら、ぜひご自分なりに噛みくだいて解釈して味わってみてほしいところです。
にこっとポイント
- 「へび のみこんだ」「なに のみこんだ」とお決まりの展開で進むので、読み聞かせにもおすすめの盛り上がる絵本です。
- へびが次々と「あるもの」をのみこんでいく理由にも注目です。大人なら、そのピリッと効いたダークなユーモアにゾワっとなるはず。
(にこっと絵本 Haru)