この絵本を読んだ後、あなたは、誰を思い浮かべるのでしょうか?
『ちょっときて』瀬川康男作、小学館、1996年 amazon
「ちょっときて」と言ったかと思ったら、「ちかづかないで」「あっちへいって」! 『ちょっときて』は、わがまま放題のねずみと、ねずみに振り回されるねこのお話。そんなねずみの本当の気持ちは? 最後には、ねずみの一言にきっと心が温かくなるはずです。
ツンデレねずみの本心は? 本当に大切なものに気づくこと
ねずみの、わがままぶりは見ていてちょっとひどいと感じるくらい理不尽で、ねずみのことばに一喜一憂して動き回るねこに、読みながら同情してしまいます。
それでも、読んでいくうちに何だか共感してしまうのです。ねずみに共感するか、ねこに共感するか― それは人それぞれかもしません。でも、絵本を読み終える頃には「いっちゃって」「いかないで」なんてやりとりを繰り返しても、結局はお互い「ここにいて」と伝えたくなる相手が思い浮かぶのではないでしょうか。
パートナー、子ども、親、友人― 大切な誰かと一緒にこの絵本を開きたくなる。大切な人との時間を大切にすることを、改めて思い出させてくれる一冊です。
瀬川康男の描く、美しい絵本
作者は、絵本作家として国内外で長年活躍されている瀬川康男さん。ベストセラー絵本『いないいないばあ』を目にしたことがある人も多いでしょう。
『ちょっときて』は、鮮やかな線描がみどころです。繊細なのに大胆に画面に広がっていく模様に、きっと目が釘付けになってしまいますよ。
また、ねずみやねこの気持ちに合わせて、色合いが変化するところも必見です。色の混ざり具合や、色合いの濃淡にそれぞれの気持ちがよく表れています。飾りたくなるほど、美しい絵本です。
にこっとポイント
- 大切な人との関係を大切にしたいと感じさせてくれます。
- 線描の模様や色合いはずっと見ていたいほど美しく、飾りたくなってしまうような絵本です。
(にこっと絵本 Haru)