小学校の先生の、子どもたちへの想いを描いた作品をご紹介します。

『さんすう』扇野剛ぶん、花くまゆうさくえ、仮説社、2024 amazon
教師になって33年。54歳の安西一成(イッセー)先生には、最近気になる子が2人います。
一人は、5年1組の桜木ソラくん。もう一人は、5年2組の嵐ハルさん。2人は、算数が苦手な様子。

ソラくんはふざけっぱなしだし、ハルさんは聞いてるふりして全然話を聞いていない。
ベテランと新人の2人の先生も、もうどうしていいやらわからない。


そこで、もう担任ではない安西先生が、思い切ってお願いしました。
ためしに算数の時間だけ、2人と授業させてほしい。
そうして始まった、3人の授業。5年生だけど九九からつまずいている2人を、安西先生は根気強く支えます。
結果1か月の取り組みで、2人は元の教室に戻るようになったのです。
ソラくんとハルさんは、授業についていけない困った子でした。先生は、プリプリ怒ったりアップアップになったり。
ですが、たった1か月2人に合ったやり方で授業をしたら、見違えるように変わったのです。
授業についていけない「困った子」は、実は「困っている子」だった。
周囲がその子をどう見るのか、大人の見方変わったから、この2人の困りは楽になり、良い方向への成長が見られたのです。
子どもたちの困りが大人に伝わったこと。子どもたちが「楽」になったこと。
久しぶりに、読んでいて涙が流れた作品でした。
にこっとポイント
- 授業についていけない「困った子」は、実は「困っている子」だった。教員不足でますます先生方は大変になっていますが、全部の学校に、安西先生がいてほしい― そう願わずにはいられません。
- 初任で奮闘している先生にもぜひ読んでいただきたい作品です。
(にこっと絵本 森實摩利子)