一人の男の子が泣いています。けれども、まわりの子どもたちは言うのです。
「はじまったときのこと みてないから どうしてそうなったのか ぼくはしらない」
「はじめたのはわたしじゃない」「ひとりではとめられなかった」
「先生に言いつければいいのに よわむしなのよ わたしはかんけいないわ」
『わたしのせいじゃない−せきにんについて−』レイフ・クリスチャンソン文、ディック・ステンベリ絵、二文字理明訳、岩崎書店、1996 amazon
『わたしのせいじゃない』は、シンプルでかわいらしい絵柄なのに、心に深く突き刺さってくるスウェーデンのロングセラー絵本です。
「わたしのせいじゃない?」と自分の胸に今一度問いかける強さを持てたら
泣いている子を取り巻く子どもたちの証言を、皆さんはどう感じたでしょうか。
この絵本には、「答え」は出てきません。私たち読者が、自分で向き合うしかないのです。
巻末には、様々な写真も掲載されています。空を仰ぎ、涙を流す子ども、血に濡れた子どもを抱く兵士、ごみの山の上を飛び交う鳥たち、銃を手に微笑む少年―。
世界の向こう側のことであっても、身近なことであっても、自分の行動と言動に胸を張って生きていけたら、私たちはきっと強くなれるはずです。
「では、あなたはどうする?」とまっすぐに問いかけてくる、覚悟のいる、でも一度はしっかりと向き合いたい絵本です。
今、自分にできることに責任を持って
責任を負うことは、時にとても勇気のいることです。仕事、育児、人間関係― 特に今は、新型コロナで慌ただしく、イレギュラーなことばかり続いています。そんな中、責任を肩に背負い、闘っている人たちがたくさんいるはずです。
感染への不安、ままならない外出、生活必需品の不足、錯綜する情報― そんな情勢に皆さん疲弊しているかもしれません。感じられるのは、疲れや悲しみ、怒り、焦燥感だけだということもあるでしょう。
「あなたはどうする?」
私は、そんな中でも助け合おうと手を差し伸べる人は必ずいると思います。
そして、絵本の世界や「にこっと絵本」も皆さんの味方です。少しでも皆さんの生活のお役にたてたら−。そんな願いを込めて、この記事をお届けします。
にこっとポイント
- スウェーデンで20年以上ロングセラーとなっている、人間関係、社会問題へと目を向けるきっかけをくれる絵本です。
- 今だからこそ、向き合いたい「責任」を問いかけるテーマを扱っています。
(にこっと絵本 Haru)