『ゆっくりがいっぱい!』エリック・カール作、くどうなおこ訳、ジェーン・グドールまえがき、偕成社、2003 amazon
ゆっくりのんびりおっとりと、木の枝つたってやってきたナマケモノくん。ゆっくりのんびりおっとりと、朝から晩まで木の上で過ごします。
ある時、ジャガーが聞きました。「なんで そんなに なまけているんだい?」。
ナマケモノくんはながーいあいだ考えて、とうとう返事をしたのでした。
ゆっくりのんびりおっとりと、子育て
ナマケモノくんは、ずっと同じ場所にいて、なんだかなにもしていないように見える。でも、それって怠けているわけではないのですよね。
子育てをしてから改めてこの絵本を読み返したとき、わたしは子どもの成長についての焦りや不安感が一番に頭に浮かびました。まわりと比べて「これがまだできない」と焦ったり、「なんでできないんだろう」とイライラしてしまったり。
子育てをしていると、子ども自身の個性を大事にしよう、と頭では思いつつも子どもたちの「ゆっくり」な部分に心が平静でいられないときがあるのではないでしょうか。
「活動に参加せず、お友達を見ているだけに見えても、子どもたちはたくさん考え、学んでいるのですよ」― と、子どもの通う幼稚園の先生がおっしゃっていたことがありますが、この絵本を読んで、それがすとんと納得できたのです。
ゆっくりのんびりおっとりが好きな子も、いるよね。そんな過ごし方も素敵だよね。自分の「やりかた」でがんばっているんだね。
そう思えたら、わたしたちの毎日も、さらに穏やかにやすらかになるはずです。
なんで いつも いそいでいるんだろう?
はやく はやく はやく! って (略)こんなんじゃ ともだちと いっしょに ゆうひを みたり
よぞらのほしを みあげたり― なんて するひまがないよ
ああ― ほんのすこしでもいいから―
ものしずかな ナマケモノから
なにかを かんじとってくれたらなあ(裏表紙 作者メッセージより)
この絵本に触れると、いろいろな人がいて、いろいろなペースがあるよね、と気づくことができます。ナマケモノくんが教えてくれる、「ゆっくり」がいっぱいの暮らしを、皆さんもぜひ体感してみてくださいね。
にこっとポイント
- ナマケモノくんを取り巻く、様相さまざまなジャングルの生き物たちにも注目です。生き生きと鮮やかに描かれている様子がストーリーに彩りをそえています。姿形がさまざまな動物たちのように、それぞれのスタイルがあって、ペースがあることに気づき、他者理解にもつなげていくことができます。
- 忙しい毎日を送る大人の方たちにも読んでほしい絵本です。「くつろいで しずかに やすらかに」過ごす心地よさを思い出させてくれます。
- 2021年5月に永眠された、エリック・カールさんに想いを馳せて。作者からのメッセージを受け取ってみてください。
(にこっと絵本 Haru)