海やプールにバシャンと飛び込むと、あー、気持ちいい! その冷たさも、水の中独特の身体の軽さも、水の感触も、泳ぐのが好きな人にとっては、幸せそのもの。
でも、水が苦手だったら? 泳ぐのはおろか、顔が濡れるのが嫌。子どもなら、避けられないプールの時間は憂鬱でしかありません。
『およぐ』は、そんな人たちの背中を押してくれる科学絵本です。
『およぐ』なかのひろたかさく、福音館書店、1978 amazon
この絵本は、「楽しいから泳いでごらん」「がんばれば泳げるよ」なんて言いません。
そのかわりに、どうして身体が浮くのか、その仕組みをちゃんと説明してくれるのです。
それから、プールに入ってから水に慣れる方法、息を吐く練習、もぐり方、泳ぎ方…… 順を追って丁寧に、でも、決して押し付けず「みんなで みずのかけっこをしよう」「さあ、こんどは ひとりで やってみよう」と誘うように教えてくれます。
泳ぐのが大好きなあるお母さんの悩みは、お子さんのプール嫌い。一緒にプールに行っても、泳ぐ楽しさを教えてあげることができませんでした。「こんなに楽しいのに何で嫌なの? ってちっとも理解できなくて」。
そんなとき、2人で『およぐ』を読んでみたところ、お母さんは「強引過ぎたのかも」思い、お子さんはお風呂で「にんげんの からだも みずに うくか」試してみていたとか。
それぞれによかったと思うのですが、特に、お子さんの「ちょっと試してみた」というのが、いいですよね。
その「ちょっと」って、案外大事。『およぐ』は、こんなふうに、「やってみようかな」という気持ちにさせてくれる絵本なのです。
『およぐ』を読んで思い浮かぶのは、自分の姿。「みんな泳げるなんてうそだ」と思っている人は、泳げるようになった未来の自分が、泳ぐのが大好きな人は、初めて泳いだあの日の自分が、そっと浮かんでくるようです。
誰もが泳ぎたくなる絵本です。
にこっとポイント
- 泳ぐのが苦手な人、お子さんプール嫌いが理解できないお父さん・お母さん、そして、泳ぐのが大好きな人におすすめします。
- 「なぜみんな泳げるか」を丁寧に説明してくれるので、特に「自分は絶対に泳げない」と強く思っているお子さんに読んでいただきたいと思います。
- 泳ぎだけではなく、何事も「ちょっと試してみる」ことの楽しさ、大切さに気付くことができます。
(にこっと絵本 高橋真生)