「ぼくのぼうし どこいったん?」なくなってしまったお気に入りのぼうしを探して歩いている、くま。行く先々で、出会う動物たちにぼうしの行方を尋ねます。
『どこいったん』ジョン・クラッセン作、長谷川義史訳、クレヨンハウス、2011 amazon
けれども、返ってくる答えはどれも、「しらんなあ」「みてへんで」。
なかなか見つからず、悲しみにくれるくまですが、ぼうしのことを思い返すうちに、ある誰かのことが思い浮かびます。さて、くまは大切なぼうしを見つけることができるのでしょうか。
「どこいったん!」と叫びたくなる緊迫したラスト
作者ジョン・クラッセンさんは、もともとアニメーションを手がけていた人です。そんな彼が初めて文と絵を手がけたのが、本作『どこいったん』でした。
そんな作者らしい、シンプルでシックな絵はなんとも言えません。初めてこの絵本に出会ったとき、私は、感情が読み取れないようなくまの視線から、目を離せませんでした。
そのくまの微妙な表情の変化が一番効いているのが、くまとうさぎが見つめ合うシーンです。見開きで、ことばもなく向かい合う2匹。赤いぼうしをかぶったうさぎと視線を合わせるくまの表情からは、その感情がどんなものなのか想像をかきたてられます。
まさに、ことばで多くは語らず、絵で雄弁に語る絵本。思わず声をあげてしまいそうになる衝撃の展開、あなたはどんなラストを想像するでしょうか。
ゆるっとした大阪弁と緊迫の展開の化学反応! 訳が光る絵本
絵本の帯には、「ちょっとどきっとするお話をほんわかと……訳してん」と、訳者・長谷川義史さんのことばがあります。そう、この絵本の大きな特徴は、大阪弁で訳されていること。淡々と交わされる動物たちのゆるい大阪弁の会話と、どきっとする緊迫感とのギャップが、くせになります。
原書とはまた違った、日本版らしいこの化学反応をぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。
にこっとポイント
- まさに、絵で語る絵本。思わず声をあげてしまいそうになるラストに注目です。
- ゆるい大阪弁と、どきっとする緊迫感とのギャップは、日本語版ならではです。
ぼうしシリーズ
本作に続く、『ちがうねん』『みつけてん』を合わせて読んでみるのもおすすめです。海外でも多くの人を虜にし、数々の賞を受賞している作品です。
なお、『どこいったん』(I WANT MY HAT BACK)は、2011年にニューヨーク・タイムズベストセラーに選ばれ、『ちがうねん』(THIS IS NOT MY HAT)は、2013年コールデコット賞・2014年ケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。
(にこっと絵本 Haru)