「どうぞ」と言ってもらったとき、あなたはどうしていますか?
『どうぞのいす』香山美子作、柿本幸造絵、ひさかたチャイルド、1981 amazon
うさぎさんが、小さな椅子を作りました。椅子には、うさぎさんが作ったことが分かるようにしっぽまでついています。側には立て札も立てました。「どうぞのいす」と書いてありますよ。
さっそく、ろばさんがやってきて、かごのドングリをこの椅子に置いてお昼寝です。
その間、野原にやってくる動物たちは、「どうぞならばいただこう」と椅子にのっている食べものを食べ、「あとのひとにおきのどく」と自分が持っていた食べものを置いて帰ります。さて、お昼寝から起きたろばさんが見たものは……?
「どうぞ」ということば
「どうぞ」という一言を、私はついつい忘れがち。運転で先を急いでいるとき、疲れて電車に乗って椅子に座りたいとき、混んでいるレジに並ぼうとするときなど、思い返せば、言えなかったなぁという場面があります。ちょっと反省気分になりますね(笑)。
今回の物語は、勘違いから始まった「どうぞ」の連鎖ですが、私が特に好きなのが、「どうぞならばいただこう」とその親切を素直に受け止めるところです。
そして、「あとのひとにおきのどく」と次の人に自分が受けた優しさをつないでいくところが特に素敵です。
あなたは「どうぞ」と言われると、変に遠慮してしまって「すいません」とことばを返していませんか? せっかく誰かがあなたを思ってかけてくれた親切です。「ありがとう」と受け取って、次の人に優しさをつなげていきたいものだなと思います。
にこっとポイント
- 「どうぞ」「ありがとう」という優しさをつなげていきたいという気持ちになります。
- 柿本幸造さんの優しいイラストが物語をいっそう温かいものにしてくれています。「どんぐり」や「くり」など、秋の季節にぴったりの作品です。
(にこっと絵本 森實摩利子)